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 さて、今日はクロノ君とデートや。
 この前は突然やったから何の予定も立てられへんかったけど今回はちゃうで。
 しっかりプランを立てたからな。




デート+1





 お弁当もよし、服装もよし、今日行くところの確認もよしや。
 ずっと楽しみにしてたんや。今日はクロノ君との距離を縮められるとええな。一番ええのはクロノ君がわたしのことを意識してくれるようになることやけど、それはやっぱり難しいんやろうな。

「準備はこれでいいですね」
「ばっちしや」

 そういえばあの時はシャマルがこっそりついてきておったんやよな。
 この前みたいなことにならんようにちょっと釘を刺しとかんと。

「シャマル、この前のようなおいたはあかんよ。今日は大人しくしとるんやで」
「ええー、そんな〜、もし今度こそはやてちゃんのファーストキスになったらどうするんですか?」
「ファ、ファーストキス!?」

 そ、そういえばあん時はあやうくそんなことになりそうな雰囲気やったな。
 あ、あかん、あん時はいくらなんでもわたしがどうにかしとったんや。
 たしかにあれも嘘やないけどもう一度あんなこと言ってクロノ君に退かれたら困る。
 きょ、今日はそんなことにならんように気いつけんと。

「…それにしてもなんやリビングの方が騒がしいなあ」

 さっきからヴィータの声がここまで響いてきよる。

「そういえばヴィータちゃんにはクロノさんとのこと言ってませんでしたね。多分はやてちゃんと一緒に行こうとしてシグナムに止められているんだと思います」
「なんでヴィータには言っとらんの?」
「ヴィータちゃんの場合、はやてちゃんがクロノさんのことを好きだって言ったら直接クロノさんのところに乗り込んでいきそうですから」
「そんなことあらへんと思うんやけどな〜」

 ヴィータはええ子やから言えばわかってくれるはずや。
 クロノ君に乱暴なことするとも思えへんのやけどな。

「ヴィータちゃん、はやてちゃんのこと大好きですからね、とられたと思ったら何するかわかりませんから。
 それに乗り込んで暴れるのも困りますけど、クロノさんにはやてちゃんのことをどう思っているのか問いただすかもしれませんよ?」
「それはちょっと困るな〜」

 今の段階やとまちがいなくクロノ君からいい返事がもらえるとは思えへんからな。せいぜい友達どまりやろうし。
 はあ、自分で言っておいて鬱になってきよるな。

「…そろそろ止めに行ったほうがいいかもしれませんね」
「せやな、シグナムもヴィータ相手やと大人気ない時があるからな」
「昔はそんなことなかったんですけどね。まあ恥ずかしがっているシグナムも可愛いんですけど」
「あんまりからかったらあかんよ。悩みは人それぞれなんやから」
「はい、わかっています」

 さて、デートの前にヴィータを説得せんとな。




 リビングに行ったらすでに一触即発の事態やった。
 一応ザフィーラがいざとなったら止めに入れるように構えとるんやけど二人を同時に相手したらいくらなんでももたへんやろうな。
 まったく、家の中でデバイス抜かんように言っとるのにな。

「二人とも、そのへんにしておきなさい」
「せやで、喧嘩したらあかんよ」

 わたしに気がついた二人がすぐに今にも発動させそうだったデバイスをしまい、気まずそうな顔をする。
 二人ともそんな顔するんやったらやらなええのにな。わたしも仲良くしてくれていた方が嬉しいんやから。

「なあはやて、今日あたしも一緒に行ってもいいだろ?」
「ヴィータ」

 やっぱりそのことなんやな。

「シグナム」
「…はい」

 うんうん、ここはわたしがしっかりせんとあかんからな。
 それにヴィータには悪いんやけど今日は遠慮してもらわんとな。

「あんなヴィータ」
「うん」

 ああ、そんな目で見んといて。決意が鈍りそうや。
 せやけど今日ばかりは心を鬼にしてかからんと

「そんなにわたしと行きたいんか?」
「うん、あたしははやてと一緒にいたいんだ」

 せやからそんな嬉しいそうな声で言わんといて。
 それにそんな期待のこもった目で見られたら…あかんよ。
 うう、今度はすごく悲しそうな目に変わりよった。ああ、そんな目で見られたらもう断れへんやないか。

「…わかった。せやけど今日はクロノ君に奢ってもらう約束やからクロノ君がええといったらやで。勝手にヴィータの分まで上乗せするわけにはいかんからな」
「うん、わかった」

 はあ、そんなこと言うたけどクロノ君の事やからヴィータも一緒でええって言ってくるんやろうな。

「主はやて、それでいいのですか?」
「ええよ、クロノ君も大事やけどヴィータも大事やからな」

 せや、クロノ君もヴィータも比べられんほど大事なことにはかわらへんからな。
 うん、一緒に行くくらいかまへんな。

「…それならよろしいのですが」

 あんがとな、シグナム。
 せやけどわたしは大丈夫やで。

「まあまあシグナムもそのへんで。ヴィータちゃんも一緒に行きたいなら支度してこないとダメよ。
 クロノさんは時間に正確だからすぐにでもくるわよ」
「おう」

 もうそんな時間なんやな。
 あ、噂をすれば影やな。さっそく来たみたいや。

「はい八神です。……ええ、わかりました。すぐに準備できますからあがって待っててください。
 シグナム、クロノさんを迎えにいってちょうだい」
「わかった」
「あ、ならあたしが行ってくるよ。ついでに一緒に行っていいか訊いてくる」
「待てヴィータ、おまえは支度を…ってもう行ってしまった」

 ははは、ヴィータもせっかちやな。
 わたしももう一度確認しておかんとな。

「いいってさ」

 もう戻ってきたんか。せやけど早いのはともかく問題があるようやな。

「ヴィータ、クロノ君がついてきておらんで。しっかり案内してこんとあかんよ」
「あ、ごめん」

 まったく、ヴィータもしゃあないな。
 せやけどうん、今日はちょっと予定とかわってしもうたけどクロノ君と一緒なのはかわらへんしな。
 今日はめいいっぱい楽しもう。




 今日もいい天気やな。最高のお出かけ日和や。

「なあクロノ、今日はどこに行くんだ?」
「僕はどこでもかまわないぞ。今日ははやての予定に付き合う約束だからね。はやてと君で決めるといい」

 わたしの横にいるヴィータと後ろから車椅子を押してくれとるクロノ君が話してる。
 今日の予定やな。まずは映画を見ようと思ってんねん。
 その後は昼食食べてウインドウショッピング行ったり買い物したりいろいろクロノ君と回るんや。

「はやて、どこに行くのか決めてあるの?」
「もちろんや。まずは映画を見にいくんや。場所もやっているものもしっかり調べてあるで」
「ふうん、何を見るんだい?」
「それは行ってからのお楽しみや。あ、そこの角は右に曲がってな」
「ああ、わかった」

 映画は恋愛物やけどクロノ君も気に入ってくれるとええやな。せやけどヴィータはどうなんやろ。
 よく考えてみるとヴィータにはまだちょっと早いかも知れへんな。せやけど他にええのあったかな?
 と、そんなこと考えとるうちに着いたようやな。

「あそこや、あそこの映画館でやってるんや」

 ええっと、わたしが見ようと思っていたのは……おお、あった。

「あれや、あの恋愛ものなんやけど……」
「はやて! これ、これがが見たい!」

 なんや、ヴィータの興味を引いたもんがあるんか。どれどれ……

「…………」
「…………超圧戦士グラヴィトンマン?」

 ええっと、これは子供向けのヒーローアニメやな。うん、そういえばたまにヴィータが見とったような気がするな。

「おう、ギガントみたいなハンマー片手に悪党をばったばった倒すんだぜ。すっげえ面白いんだぞ」
「…は、はやて、どうする?」
「せ、せやな、ヴィータが見たいって言っとるんやし、あれにしよか」

 ふう、そりゃわたしも見たいもんあるけど、ヴィータのあの期待に満ちた目には勝てんよ。




 結論、意外とおもしろかったわ。
 ずいぶん話に手が込んでおったし、はらはらどきどきしたわ。
 ヴィータも満足そうやし、まあこれはこれでよかったわ。

「クロノ、ありがとな、これまで買ってくれて」
「気にするな。それだけ喜んでくれるなら僕も嬉しい」

 ほんまにすまんな。ヴィータに映画館で販売していたグッズまで買うてもろうて。

「やっぱりグラヴィトンマンはかっこいいな。はやてもそう思うだろ?」
「せやな、最後のハンマーで次元の歪みを叩きなおすところはびっくりしたな」
「…僕はあまりの理不尽さに頭が痛かったよ」

 ははは、クロノ君は普段から次元震が起きんように巡回しとるわけやし、いざ起きた時はひどいことにならんように対処せなあかんからな。
 似たような現象をあんな力技でどうにかされとるのを見るのはいろいろ思うところがあるんやろうな。

「そろそろお昼にしよか。ヴィータの分も詰めなおしてきおったけどちょっと足りんかもしれへんな。
 ヴィータ、他に食べたいもんあるか?」
「なんでもいいのか?」
「ああ、大丈夫だ。ただはやてが作ってきたのと一緒に食べるとなるとかなり制限されると思うが……」
「ならあれがいい。一度ああいうの食べてみたかったんだ」

 あれってファーストフードか。そういえば家では基本的に自炊やし、外食自体せんからな。
 ヴィータは時々町内会のおじいちゃんたちと食事することもある見たいやけどああいう店には滅多にはいらんやろうし珍しいんやな。
 ほな今日はあそこで買うとしようか。




 ファーストフードでヴィータの好きそうなのをいくつか買って、公園でお昼ご飯や。
 ちょっとお昼には遅い時間やからか公園には小型犬を連れた人が何人か散歩に来とる。
 ヴィータはザフィーラの散歩の時には一緒に行ってもろうてるから顔見知りも多いみたいやな。
 さっきから何人かから話しかけられ、犬たちにじゃれ付かれとるわ。

「ほらヴィータ、遊びに行く前に食べなあかんで」
「うん、わかってるよ」

 ああ、そんなに一気に食べたら喉に詰まるで。
 せやけどこうしてみるとヴィータもずいぶんこの世界に馴染んどるんやな。
 町内会のおじいちゃんに犬の散歩仲間、きっとわたしの知らんところで他にも友達がいるんやろうな。
 ……ちょっと寂しいなぁ。

「ああほら、口の周りにソースがついてるで。拭いてあげるからちょっと動かんといて」
「ん」

 もう、こんなところばかり変わらんな。手のかかる子や。

「まったく、いつ見ても戦闘中とは別人だな」
「余計なお世話だ。あたしはシグナムと違って戦いが好きじゃねえからいいんだよ」
「せやで、わたしもヴィータはこのままのほうがええからな」
「そうだな、平和なのがなによりだ」

 そうやな、こうしてのんびりできるのが一番や。

「ほら、綺麗になったで。もう遊びに行ってもええよ」
「うん、行ってきます」

 ふふ、ヴィータは元気やな。ああ、さっそく犬と追いかけっこしとる。
 おお、大きいのが来たで。頑張って逃げなあかんよ。

「やれやれ、やっぱりヴィータははやての守護騎士と言うより妹といった方がしっくりくる。
 いや、むしろ娘か?」
「ははは、そうやね。みんなわたしの子どもみたいなもんやからな。
 せやけどわたしがお母さんならさしづめ今日のクロノ君はヴィータのお父さんやな」
「――ブッ!?」

 おっと、お水お水っと。

「ほらクロノ君、お水やで」
「ああ、すまない。…ふう。
 まったくいきなり何を言い出すんだ。僕はこの歳で父親になるつもりはないぞ」

「そんなこと言うたらわたしだってまだお母さんになる歳やないよ。
 あくまで気分の問題やん」
「気分…気分か……
 たしかに今日の僕はヴィータにとって父親の役割か。
 もっとも、僕が父親だなんていったらヴィータは嫌な顔をするだろうがな」
「ははは、そうやね。なら嫌われんよう頑張らんとな」

 わたしがお母さんでクロノ君がお父さん。
 本当にそうなれたらええんやけどな。
 こればっかりはどうなるかわからへんからな。




 だいぶ日が暮れてきとるな。空が真っ赤や。

「クロノ君、重くないか?」
「大丈夫だ。はやてこそ大丈夫か?」
「大丈夫や。慣れとるからな」

 今わたしとクロノ君は横に並んで歩いとる。
 せやから車椅子はわたしが自分で動かしとる。といっても電動やからわたしはレバーを倒しすぎんように注意すればええだけやけどな。
 そんでもってなんでクロノ君が押してへんのかというと、背中に乗っているのが原因や。

「今日はたっぷり遊んでおったからな。さすがに疲れたんやな」
「そうだな、仕事も実務主体で大変だっただろうし、旅行中もなのはたちと一緒に騒いでいたからな。
 今になって疲れが出てきたのかもしれないな」

 クロノ君の背中に乗せられたヴィータは幸せそうな笑顔を浮かべながら眠ってる。
 せっかくのデートの予定やったけど結局ヴィータに合わせた行動になってもうた。
 せやけどこんなに幸せそうなヴィータの顔が見られたんならそれでもええな。

「ん〜、はやて〜」
「ははは、ヴィータ幸せそうに眠っとるで」
「そうか、僕からは見えないがそれならいい」
「きっとクロノお父さんの背中が気持ちいええからやな。今度わたしもおんぶして貰おうかな」
「だからそのお父さんというのは止めてくれ。どうも気恥ずかしい」
「ええやん、帰るまでヴィータのお父さんでおってくれても。
 ほら、きっとヴィータも喜んどるで」
「…はぁ、もういい。わかった、はやての家に着くまでだぞ」
「うん、わかったで、クロノお父さん♪」

 せやけど家まであと少しやな。せっかくやからもう少し一緒にいたいな。
 そうや、夕飯にでも招待しようかな。ああ、せやけどきっと家ではフェイトちゃんも待っとるんやろうな。
 せっかくの家族の団欒を邪魔すんのも嫌やな。
 と、そんなこと考えとるうちに着いてしもうた。

「お帰りなさい、はやてちゃん」
「ただいま、シャマル、シグナム」
「ヴィータは?」
「ここだ」

 クロノ君が背負っておったヴィータをシグナムに渡す。
 シグナムが顔をしかめとるな。うーん、シグナムの事やからクロノ君に迷惑かけたことを気にしとるんやろうな。

「ご苦労様やね、クロノお父さん」
「もう着いたんだからお父さんは止めてくれ」
「お父さん?」
「まあ♪」

 二人とも興味ある見たいやな。

「せや、今日一日クロノ君はヴィータのお父さんや。
 せやから娘が休日のお父さんに迷惑かけても問題ないんや。なあクロノ君?」
「お父さんかどうかは置いておいて別に構わないさ。ヴィータもはやても楽しそうだったし、僕もこの世界の文化についてはあまり詳しくない。
 たまにこうして連れまわしてくれるのも悪くない。…まあ程度はあるけどね」

 うんうん、クロノ君もなんだかんだ言って楽しんでくれとった見たいやしなによりや。
 それに擬似夫婦体験も楽しかったしな。またこうして三人で出かけるのもええな。

「あらクロノさん、肩に何かついていますよ?」
「ん、そうか」
「あ」
「そ、それは…」

 クロノ君の肩の部分が湿っとる。この場所はたしかヴィータの顔があった場所や。ま、まさか……
 慌ててヴィータの方を見ると口の周りによだれがたれとる。
 …ヴィータ、まさかクロノ君の肩によだれ垂らしとったんか!?

「あかん、クロノ君、洗濯せんと」
「ええ、染みにならないうちに洗わなければ。シャマル」
「わかったわ。シグナムはそのままヴィータちゃんを連れて行って。はやてちゃん、すみませんけどちょっと待っていてください。クロノさんはすぐに替えを用意しますから洗面所のほうへお願いします」
「わかった」
「大丈夫やで」
「い、いや、このぐらいなら別に……」
「ダメです。そこまで迷惑かけれません。ザフィーラ、あなたように用意してある上着を持ってきて!
 さあ、クロノさん、こっちへ」
「え、わ、ちょ」

 ああ、もう、クロノ君も遠慮せんといてええのに。

「ええからクロノお父さんははやくいくんや」
「だからお父さんは……」
「そうです、クロノお父さんは早くしてください」
「シャマル、君まで」




 クロノ君をどうにかしてシャマルが奥に連れて行ったあと、シグナムに抱っこしてもらってリビングに来るとザフィーラが寄ってきた。
 シャマルは今頃洗濯にかかっとるやろうしヴィータはベッドで眠っとる。シグナムもわたしをここまで運んできた後は車椅子の車輪を拭いてくれとる。

「主、今日は楽しかったですか?」
「そうやね、とっても楽しかったで」

 うん、ヴィータと一緒でクロノ君とも一緒で楽しかったわ。
 最初ヴィータがついてくる時はちょっと困ったんやけど、いざ遊び始めてみるとどうでもええことやったな。
 大好きな人が増えたからって困ることはあらへんもんな。

「今度はみんなで遊びに行ってもええな」







  あとがき

 GW企画第二段にて最終。かねてから出ていたGWのデートネタ。
 普通にデートするのもなんだなと思ったのでヴィータを乱入させてみました。
 というわけでうちのクロはや最大の難関は(いろんな意味で)ヴィータに認定。  ライバルは蹴落としあう関係ではないので障害扱いにはしません。
 しかしお父さん発言もこの時点の情景で想像すると実感が湧かない。
 雰囲気だけなら大人びた二人に子どもっぽい一人で納得できるんだが……
 まあそれでも気にせずに書くんですけどね(オイ

 

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