GWは明日まで、だけどクロノや母さんの休みは今日までで、明日は本局に行ってアースラを受け取ってこないといけない。
 だからこうして家族で一緒にいられのは今日まで。クロノがまた帰ってこない日々が続く。
 だから今日だけは、ずっと一緒にいてもらうんだ。




そこにある温もり





 なのはは翠屋のお手伝い、アリサやすずかはようやく休みが取れた家族と一緒、はやても今日はみんなで出かけていた。
 だからアルフに頼んで今日はクロノと二人っきりにしてもらった。
 一緒に遊びに行って、買い物して、食事して、帰ってきた。
 とっても楽しい一日だった。だけどその今日ももうすぐ終わろうとしている。

「何を見ているんだ?」
「あ、クロノ、準備終わったの?」

 自分の部屋で明日の支度をしていたクロノがリビングに戻ってきた。
 着ているパジャマは今日の買い物で買った私と色の他は全く同じデザインのパジャマだ。
 昼間お願いして同じ物を買ってもらった。
 ずいぶん頑張ってお願いしたからクロノも困っちゃったかもしれないって心配していたけど、さっそく着てくれるなんて嬉しいな。

「元々持っていく物はそれほどない。こっちで作業する為に持ってきていた整備道具や資料ぐらいだからね。むしろ色々私物を持ってきていたエイミィが四苦八苦しているみたいだ。
 まったく、せっかくの長期休暇なんだから実家に戻れば良かったのに。そのほうが移動も楽だったろうに」
「でも美由希さんとかと一緒に楽しんでいたみたいだよ。美由希さんの友達とも会ってたみたいだし」
「まあいいんだけどね。それより君も明日は同行するんだろ、準備は大丈夫かい?」
「うん、私はほとんど往復だからもって行く物もないよ」
「そうか、なら大丈夫だな。横に座ってもいいか?」
「うん」

 私が横にずれるとクロノは冷蔵庫からオレンジジュースを取り出してコップと一緒に持ってくる。
 そして私の横に座ってコップに注ぐ。コップは私の分まで持ってきてくれていた。
 一緒に暮らすようになってからこうして横に座ることも多くなったけど、まだ少し恥ずかしい。特に自分の気持ちに気がついてからはよけいに恥ずかしくなった。
 ソファーが狭いわけじゃないけどわざわざ離れようとはいない。ううん、離れて座りたくない。

「ドラマを見ていたのか」
「うん、だけどクロノが見たいものがあるならそれでもいいよ」
「いや、よくわからないからいいよ。フェイトが見たいものを見るといい」
「う、うん」

 チャンネルを変えずにそのまま見る。だけどすぐ横にいるクロノのことが気になって内容が頭に入ってこない。
 クロノはどういうのが好きなのかな?
 この前のはやてとのデートはどうだったのかな?
 あれからはやてにも会ったけど特に何も言っていなかったし、大丈夫だと思うけどクロノはどう思ったのかな?
 楽しかったのかのかな?
 今日私と一緒に出かけたのとどっちが楽しかったのかな?
 気になることはたくさんある。だけど訊けない。
 だって望まない答えが返ってくるのが怖いから。
 シグナムは私らしく接していけばいいって言っていたけど結局この一週間で私らしい接し方はわからなかった。
 そうしている間にもはやてはクロノとの関係を深めているかもしれないのに…………

「ふゎ〜」

 あ、いけない。

「フェイト、眠たいなら無理に起きていないで寝たほうがいい。テレビなら録画しておけば大丈夫だろ」
「ううん、大丈夫。そんなに眠たいわけじゃないから」

 それにこうしてクロノと一緒にいられる時間は大切にしたいから。

「…無理だけはするなよ」
「うん」

 大丈夫、無理はしていないから。明日の予定に支障をきたしもしないから。

「そういえばエイミィから聞いたぞ」
「え、何を?」
「今日の夕食は君も手伝ったんだって。どれもおいしかったから気がつかなかったよ」
「本当? 良かった。時々アルフやエイミィに教えてもらっているんだ。今日は肉じゃがをやってみたんだけどどうだったかな?」
「ああ、あれか。とてもおいしかったよ」

 クロノの手が私の髪の毛に伸び、頭をなでる。
 ちょっとくすぐったい感じがするけど、すごく嬉しくなる。
 こうしているととっても幸せに感じる。
 ずっとこのままでいられたらいいのに。

「そう言えばアルフはどうしたんだ? 今日はあまり見ていないが」

 クロノの手が遠ざかっていく。
 なでられていた頭が物足りなくてちょっと残念。

「アルフなら昼はエイミィと一緒に出かけていたよ。それで疲れたみたいで今はもう眠ってる」
「そうか、一緒にいたはずのエイミィのほうが元気が残っているというのも気になるが、まあいい」

 クロノが席を立つ。もう行っちゃうのかな?
 もう少し一緒にいたいな。
 こういう時に呼び止めることができない自分がいやになる。はやてだったらきっと……

 だけどその心配もなかった。クロノは引き出しを開けると耳かき取り、ティッシュ箱と一緒に持って戻ってきた。

「耳掃除するの?」
「ああ、どうもさっきから変な感じがしてね」

 耳掃除か……たしか前にアリサに勧められて見たドラマだとこういう時は膝枕をして耳掃除をするんだよね。
 は、恥ずかしいけどそうするべきなのかな……う、うん、こういう時は勇気を出すべきだよね。

「ねえクロノ、私がやってあげようか?」
「いや、自分でやるから大丈夫だ」
「そ、そう」

 せっかく勇気を出したのに。クロノの馬鹿。
 ううん、クロノはできることは自分でやるからわかっていたはずなのに。
 だけどクロノとそういうこともしてみたいな。

「ねえクロノ、やっぱり私がやってあげるよ。そ、それに自分でやるよりも誰かにやってもらったほうがきっと綺麗になるよ」
「まあそうかもしれないが……」
「う、うん、だから私がやるよ」
「…まあフェイトがそこまで言うならお願いしようかな」
「うん、任せて」

 クロノから耳かきを受け取って膝をそろえる。

「じゃあクロノ、ここに頭を乗せて」
「―――っ!?」
「ど、どうしたの?」
「いや、なんでもない」

 何でかわからないけどクロノが恥ずかしがっている。もしかして私のこと意識してくれているのかな?
 だったら嬉しいな。
 だけどそんな思いは実際にクロノの重みが腿の上に乗ると消え去った。
 いざやろうとした時はそうは思わなかったのに実際に乗せたとたん急に恥ずかしさが増してきた。
 こうしてクロノを見下ろすのも、下から見上げられるのも恥ずかしい。

「ど、どうした?」
「な、何でもない」

 なんでもなくなんかない。だけど恥ずかしいのはクロノも同じみたいだと思うとそれだけでほっとする。
 だから心を落ち着けて耳掃除を始める。

「……どうだ?」
「うん、そんなに汚くないよ」

 本当に綺麗だ。たぶんクロノは気になったらすぐに掃除しているんだと思う。だからそんなに汚れていないんだと思う。
 これだとあんまり掃除する必要がないような気もするけど、もうしばらくこうしていたいな。
 奥のほうまでゆっくりと降ろしていくけど中がよく見えない。
 だけど奥のほうまで覗こうと顔を近づけると今度は明かりが遮られちゃってよけいに見えなくなった。
 しょうがないからまた体を起こして、慎重に動かしていく。

「フェ、フェイト、あんまり膝を動かさないでくれ」
「う、うん」

 そっか、膝が動くとクロノも動いちゃうもんね。
 今度は膝を動かさないようにしてっと………………

「終わったよ」
「ありがとう」
「じゃあ今度は反対だね」
「ああ、頼むよ」




 よし、これでおしまい。

「クロノ、こっちも終わったよ」
「ああ、ありがとう」

 クロノは私から耳かきを受け取ると、それを綺麗に拭き始めた。

「よし、じゃあ今度は僕がフェイトのを掃除しようか」
「え、私を?」
「ああ、もちろんフェイトが嫌じゃなかったらだが」

 つまり今私がしていたみたいに頭を腿の上に乗せるんだよね。
 この前はやてがしてもらっていたみたいに膝枕してもらうんだよね。

「やっぱり嫌か」
「そ、そんなことないよ」

 嫌なんてことはない。うん、ちょっと恥ずかしいだけでむしろ嬉しい。

「お、お願いします」
「そんなにかしこまらなくても……」

 そういうわけにはいかないよ。
 クロノの膝枕だもん。
 頭を乗せるとちょっと硬い感触が返ってくる。
 鍛えられたクロノの腿は枕にするのはちょっと硬いかもしれない。
 だけど同時にクロノの匂いがしてやっぱり恥ずかしい……

「なんだ、フェイトも結構綺麗だな」
「う、うん、時々アルフがやってくれるから」
「そうか」

 違うってわかってても綺麗って言われると恥ずかしい。
 それにさっきからクロノの手が私の頭に添えられているのがくすぐったい。
 視界の端に私を見下ろしているクロノの顔がわずかに映るのも恥ずかしい。

「ひゃ!」
「うわぁ!?」

 びっくりした。

「ど、どうしたんだ?」
「ちょ、ちょっとびっくりして」

 クロノがやったのはただ耳かきを耳に入れただけ。
 だけどいきなりの感触にびっくりしちゃった。
 今は耳掃除してもらっているんだから当然なのにクロノのこと考えていたらそんなことにすら頭が回らなかった。
 もう一度耳の中に入ってくる。
 くすぐったいけど我慢する。
 だけど何でだろう、やっているのは同じなのにアルフとクロノだと感じ方だぜんぜん違う。

「痛くはないか?」
「…大丈夫」

 痛くなんて全然ない。すこしくすぐったいけどそれも大丈夫。
 それよりも時々視界に入ってくるクロノの顔が気になるよ。
 仕事中の真剣な表情でもなく、家族としている時の表情よりももっと優しい感じがする。
 いつもとあんまり変わらないはずなのに雰囲気が違うようなそんな感じ。
 なんだかとっても安心する。
 とっても…胸の奥が……暖か…く……なる……………




 よし、もともとあんまり汚れていたわけでもなかったからこれでいいだろう。
 次は反対側をやらないといけないんだが……

「すぅー、すぅー」
「すっかり眠っているな」

 まあだいぶ遅い時間だしな。明日のこともあるから眠った方がいい。
 だがこんなところじゃなくて自分のベッドで眠らないと風邪をひいてしまうかもしれない。

「だから寝たほうが良いと言ったのに」

 まあしかたがないな。アルフも寝ているみたいだしどうにかして僕だけで運ばないといけないか。
 とりあえずはどいてもらわないとな。
 ……おいおい、僕の寝巻きの裾をがっちり掴んでいるな。
 やれやれ、掴み癖でもついているのかもな。
 しかたない、このまま抱えあげることもできないわけでもないし、なんとかするか。
 片手をフェイトの肩へ、もう片方を膝の裏へと入れて抱えあげる。たしかお姫様抱っことかいうんだったな。

「うーん、クロノ〜」

 どうやら夢の中にまで僕が出ているのか。
 家族全員で一緒に出かける夢でも見ているのかもな。あるいはこの前の旅行のことか。
 しかし今日は一日フェイトに付き合ったわけだけどしっかりと兄らしくできただろうか?
 僕もまだまだフェイトの兄として不甲斐ないからな。もっとしっかりとした兄にならないと。

「クロノ〜、大好きだよ〜」
「そうか、僕もだ」

 少なくともフェイトの夢の中では僕はいい兄なんだろう。
 現実でもそうであるように頑張らないとな。







  あとがき

 いまひとつ調子が出ない。連休でだれてるな〜orz
 まあGWの最後はフェイトで締めてみました。
 日中のデートは上手くかけなかったので省略です。すみません。
 なぜか書くたびにフェイトとクロノの距離が微妙な距離になっているような気がする。



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