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 レヴァンティンが切り裂き、グラーフアイゼンが打ち砕く。
 獲物を振るう二人を援護するように雷光の槍が撃ち抜く。
 時に前に出て敵を打ち、道を開く。
 わたしやクロノ君は脇を抜けるときに援護と防御をするだけ。ほとんど三人だけで道が開かれていく。
 ほんま三人ともすごいわ。




ファーストミッション 後編



 クロノ君が立てた作戦は単純明快、周りは無視してとにかく進む事や。  前衛にはシグナムとヴィータが立ち道を塞ぐ傀儡兵を倒す。
 フェイトちゃんはカートリッジの要らないフォトンランサーで残りを撃ち、数が多い時は前に出て撹乱する。
 わたしとクロノ君は横や後ろから来るのに対応する。
 あと走るのに慣れておらんわたしだけは飛行魔法をつこうてる。
 それだけでさっきまでとはうって変わってどんどん進めとる。
 単純に戦力が増えたという以上にわたしやフェイトちゃんとクロノ君の指揮能力の差が出とるな。

「しかし無限に出てきよるから相手にするは最低限って有効かも知れへんけど無茶やな」
「それだけの能力を持っているだけのメンバーが揃っているからね。
 無駄に戦力を集めたものだと思っていたがまさかそれが役に立つことになるとは思わなかった」
「そうやな」

 世の中何がどう転ぶかわからんもんやしな。
 レティ提督が気を利かせてくれたそうやけどおかげで助かったわ。
 さすがにわたしとフェイトちゃん、アルフ、それにクロノ君だけやとさすがに難しかったやろうしな。

「次はどちらだ?」
「右だ」

 T字路を曲がる。
 しかしクロノ君さっきから全く迷わずに道を決めとるけど大丈夫なんやろうか?
 わたしも時々魔法で調べとるけどどこにあるのか全くわからへんのやけど。

「なあクロノ君、この道であってんの?」
「入る前に結界の規模とその中心点の割り出しはしてある。
 あとは結界に入ったところから中心に向かって移動しているだけだ。
 とはいえ、行き止まりに行かないという保障はない」
「じゃあこの道間違ってんかもしれねえのかよ?」
「可能性はなくはない。だがここは迷路ではなく研究所だ。
 なら多少入り組んでいても道自体は複雑になっていないはずだ」
「そうだね、時の庭園も遺跡だったけどあまり入り組んではなかった」

 そっか、詳しい話は聞いてへんけどフェイトちゃんは昔、遺跡に住んでいたんよな。
 わたしはそういうのよくわからへんし、どうしても複雑に入り組んだ迷路を想像してしまうんやけどそういうわけでもあらへんのやな。

「しかし数が多い。テスタロッサ、大丈夫か?」
「はい、まだ大丈夫です」

 遺跡に入ってだいぶ経つんやもんな、フェイトちゃんもそろそろ疲れてきとる。
 わたしは飛行魔法使いながら後方支援やし、魔力量は十分やから問題あらへんけど前に出る三人の負担は結構なもんのはずや。
 シグナムやヴィータもだいぶ疲れとるやろな。

「二人とも大丈夫か? 疲れたんならわたしが代わるで」
「ご安心を、あなたの騎士はこの程度で音を上げるほど柔ではありません」
「そうだよはやて、ここはあたし達に任せてよ」

 二人とも、疲れとらんはずないのに……

「わかった、がんばってな。疲れたらいつでも代わるで」

 せやけどわたしは二人を信じてあげなあかんな。
 それにさっきクロノ君に言われたやん。主のわたしが不安そうな顔したらあかん。

「フェイトも疲れたら言うんだぞ。その時は僕が前に出る」
「うん、でも本当に大丈夫だから」
「君がそういうなら信じよう。だが無理だけはするなよ」
「うん」

 フェイトちゃんも頑張るな。
 ん? 前から強い魔力を感じるで。
 奥のほうに今までのよりひときわ大きな傀儡兵がおるのが見えるな。あれの魔力が高まっているんやな。
 あの光は……砲撃魔法!?

「クロノ君、前!」
「ちっ、三人とも下がれ!」
「Round Shield」
「パンツァーシルト!」

 後ろに下がった三人の代わりに二枚の盾で受け止める。
 思ったほどの威力はない。これなら余裕や。

「まずいな」

 まずいってどないしたんや?
 砲撃もたいしたことないんやし気にすることなんかないと思うんやけど……

「また出てきたぞ」

 一気に傀儡兵の数が増えとる。

「なんで突然こんなに出てくるんや?」
「生成といってもその場で作っているわけじゃない。
 生成した分を魔力を吸収した場所に転送しているんだ。だから僕たちが使わなくても仕掛けが発動して魔力が散れば出て来るんだ」
「そんなことははよう言ってな」

 ってことはあの砲撃が来るたびに出てくるんか。
 せやったら先にあっちをどうにかせんと。

「あの傀儡兵、他のと違って汚れてる。さっき生成されたとは思えない」
「おそらくは最初から設置してあるタイプなのだろう。あの砲撃は威力は低めだったが場所を選ぶ」
「ああ、最初からここを壊してもいいと思って作られたのでなければここに前もって仕掛けられていたんだろう。
 都合のいいことにここは一本道だ。射線を邪魔する物はない。
 それにおそらくはあれの役目は足止めと侵入者の居場所を知らせることだろう」
「はよう壊さんとあかんのはたしかやな」

 せやけどどうしたらええんやろ。
 ここから砲撃魔法で攻撃するんが一番いいんやけどきっとバリアも硬いで。
 それに合わせて威力を上げるとなると対物設定で撃つのは躊躇われるで。クロノ君はどうするんやろ?

「…しかたがない。僕が砲撃魔法で道を開ける。
 その直後にはやては射撃魔法で攻撃、フェイトは前に出て途中に残っている相手の排除。
 シグナムとヴィータはフェイトと一緒に前に出て一気にあいつを破壊してくれ。その際にカートリッジを使ってもかまわない」
「いいのか?」
「一番いけないのはここで無駄に体力と魔力を消耗することだ。
 なら多少の無茶は承知でいくしかない」

 それもそうやな。三人とも今のままでも大変そうなんやからここで消耗すんのはあかん。
 せやけどクロノ君判断早いな。ほとんど即決やないか。

「ならばテスタロッサ、周りのことは任せたぞ」
「うん、任せて」
「よっしゃー! 思いっきりいくぜ」

 三人ともやるき満々やな。わたしも気合入れへんとな。

「刃もて、血に染めよ。穿て」

 こっちの準備は万端やで、クロノ君。

「Blaze Canon」

 炎を伴うクロノ君の砲撃魔法が傀儡兵を薙ぎ払う。
 それに合わせてフェイトちゃんが前に出る。

「ブラッデダガー」

 周りに残ったのをわたしの白い刃が貫き、道がつくる。
 せやけどすぐに他のが前に出ようと動き出す。

「バルディッシュ、ランサーセット」
「Get set」
「レヴァンティン」
「Explosion」
「グラーフアイゼン」
「Explosion. Raketenform」
「ファイヤー」
「Plasma Lancer」

 フェイトちゃんの雷光の槍が前に並ぶ傀儡兵を撃ち貫き道を塞がせん。
 これでもうシグナムとヴィータを邪魔できる者はおらん。

「紫電一閃」
「ぶち抜け!」

 二人の同時攻撃にたいしてバリアは簡単に砕き、そのまま大きな傀儡兵も切り裂き、打ち砕く。
 よっしゃー! 二人ともよくやったで。

「主はやて!」
「はやて!」
「えっ?」

 急に視界が遮られる。わたしらを囲むように傀儡兵が現れ、轟音に続いてヴィータたちの姿が見えんようになった。
 ただ傀儡兵が現れただけやない。道自体がふさがっとる。
 えっ? な、何が起きたんや?

「ま、まさか崩れたんか!?」
「いや、どうやらこれもトラップの一つのようだ」
「クロノ君、どういう――っ!」

 前だけやない。後ろにもいつの間にかびっしりと傀儡兵が集っとる。

「複数の侵入者を前衛と後方支援者で分断する。
 簡単には倒せない障害を囮にして罠を仕掛けるとはここを作った奴はよっぽど性格が捻くれていたんだな」
「そんなこと言うとる場合やないで。囲まれとるやん」

 リインフォースがおらんわたしやとブラッディダガーもたくさんは使いこなへんし対物設定で強いの撃ったら崩れよる。
 それに広域魔法やとクロノ君も巻き込んでしもう。

「はやて、僕にしがみつけ」
「えっ、こ、こないときに何言うてんの!?」

 しがみつくなんて恥ずかしいやないか。いくらピンチやからって早まったらあかん。

「いいから早く!」
「わ、わかったで」

 そう怒らんでもええやろうに。
 ほな失礼して……

「よし、いくぞ、しっかり掴まっていてくれ」
「う、うん」

 せやけどクロノ君なにするつもり何やろうか?
 元来た方に走り出してってこのまま突っ込むつもりかい!? いくらなんでも無茶や。

「Stinger Snipe」

 今度は突然立ち止まって魔法や。
 クロノ君の放った水色の魔力弾は螺旋を描きながら前へ進む。せやけど綺麗な螺旋やなくて線がぐにゃぐにゃ曲がった変な軌道や。
 それがわずかにずれて並んでおる傀儡兵を貫いていく。
 たいした貫通力やけどさすがに撃ちもらしとるな。よし、わたしも援護しよ。
 そんなら前にいるのだけなら何とかなるかもしれへんし。

「はやて、動かないでくれ」

 動かないでくれって動かなやられてしまうやん。

「スナイプショット」

 もう別の魔法のチャージが終わったんか? むちゃくちゃ速いな。
 あれ? デュランダルには光がともっとるのに何も起きへん。失敗したんか?
 ん? 前から何か来よるな。あれはクロノ君の魔法光――

 うぉ! 今わたしのすぐそばを通っていったで!
 爆発が重なり前にいた傀儡兵が一斉に砕けた。後ろを見てみればこっちもほとんどが壊れてる。
 後ろだけでも十はおったのに。前も合わせれば今のでどんだけ倒したんやろ。

「クロノ君すごいやん」

 残ったのを倒して一息ついてクロノ君に話しかける。

「君に比べれば場数は踏んでる。魔力量と瞬間放出量以外では君やフェイトたちに負けるつもりはない」
「せやかてこの威力はフェイトちゃんにも負けてへんとちゃうか?」
「魔力を圧縮して貫通性を高めているからそう見えるだけだ。実際の単純破壊力ではフェイトのスマッシャーやなのはのバスターには及ばないよ。
 その代わり消費魔力量ははるかに少ないけどね」
「低コストで高リターンやな。便利な魔法や。今度教えてくれへん?」
「それはかまわないが君の魔法はリインフォースが残した物を使っている段階だ。
 新しく覚えるなら基礎からしっかり勉強しなおさないと難しいだろうな」

 そりゃ大変やな。せやけどずっとこのままというわけにもいかへんし、しっかりとした先生がおるなら問題あらへんな。

「そん時はクロノ君が先生やな」
「ミッド式限定のね。さすがにベルカ式はわからない」
「ははは、それはシャマルやシグナムに教えてもらうわ」

 はは、まさかこんな場所でこんな話をするとは思わへんかった。

「はやてー!」

 この声はヴィータやな。良かった、向こうも大丈夫だったみたいやな。

「待てヴィータ」
「うっせぇ! 向こうにはやてがいるんだぞ!」
「だからって不用意に壁を壊そうとするな。崩れたらどうする」
「はやてを助けてから考える」

 ………いやなヴィータ、その気持ちは嬉しいんやけどな。

「このままいくと間違いなく壊すな。
 はやて、声をかけてやったほうがいいと思う」
「せやな。おーい、ヴィータ、わたしは無事やでー」
「はやて!」

 うんうん、いつものヴィータに戻ったな。

「はやて、今この壁壊すからな」
「ヴィータ、落ち着いてな。まずは壁の周りを調べて壊しても大丈夫か確かめんと」
「あ、うん、わかった」

 ふう、良かった。せやけどこの壁壊しても大丈夫なんやろうか?
 うーん、わたしにはわからへんな。

「クロノ君はどうおもう? 壊してもうても大丈夫やろか?」
「判断が難しいな。
 シグナム、フェイト、ヴィータ、君達の状態はどうだ?」
「見くびってもらっては困る。私とテスタロッサはカートリッジを一つずつ使わせてもらったがこのあたりに敵はもう残っていない」
「当然無事だぜ。クロノ、本当にはやては大丈夫なんだな?」
「ああ、怪我一つ負わせていないから安心してくれ」
「そうですか。それで、そちらから見てどうだ?
 私見では何とか大丈夫だとおもうのだが?」
「同感だ。だが周りの被害を抑えて壊すとなるとヴィータのラケーテンハンマーが有効だと思うがその後のことが気になる」

 カートリッジロードするんやからまた出てくるやろうしな。

「クロノのブレイクインパルスじゃダメなの?」
「建築素材が同じだと振動波の影響が周囲にまで及ぶ可能性がある」
「そっか」
「それにもう中心地はすぐ近くだが同じような罠がないとも限らない。
 バルデッシュ、今までのルートから目的地のだいたいの場所はわかるか?」
「No problem」
「そうか、なら三人で先に進んでくれ」
「はぁ、なんでだよ?」

 そうや、わざわざここまで来て二つに分ける必要はあらへんやろ。

「僕とはやてを連れて行くよりも君たち三人だけのほうが行動が速い。
 それに君達なら罠があっても振り切ることが可能だ。
 後ろを気にせずにいけるなら五人でいたときよりも速くいけるはずだ」
「だけどはやてを残していけるかよ」
「はやてには僕がつく。それに今頃結界の外にはエイミィが呼んだ後詰用の武装局員二個中隊が待機しているはずだ。
 結界が消えれば転移もできる。これが現状でもっとも最速で解決に至る手段だ」

 たしかに接近戦に強い三人なら自分に向かってくる相手だけを倒しながら前にいけるやろうな。
 わたしを守りながらよりもずっと速くいけるはずや。後方支援もフェイトちゃんが行えるしシグナムもヴィータも高い防御力をもっとる。

「ヴィータ、クロノ君の言う通りや。大丈夫やろうけど崩れる可能性もあるんや。シグナムたちと先に行ってや」
「だけど……」
「…了解しました」
「シグナム?」

 よかった、シグナムは納得してくれたようやな。

「ヴィータ、主はやてもハラオウン執務官も私たちを信頼してくれているからこそ先に行くように言っているのだ。
 ならば騎士としてその信頼にこたえるべきだ」
「…………」
「そして主とハラオウン執務官も十分に強い。
 おまえは二人が信頼できないか?」
「…そんなことねえよ」

 ヴィータ……

「うん、そうだね。クロノとはやてなら大丈夫だよ」

 フェイトちゃん……

「ああ。はやて、すぐに片付けてくるからな」
「それでは先に失礼します。御武運を」

 シグナムもありがとな。私を信じてくれて。

「…行ったか」
「そやな、きっとすぐに片付くで」
「そうだな、僕たちは少しここで休ませてもらうとしよう。
 はやて、君も飛行魔法と足の強化を解いて休むといい。君自身は気がついていないようだがかなり疲れているはずだ」
「そんなことはあらへんよ。せやけどまあ休ませてもらうわ」

 飛行魔法を解いて地面に座る。
 せやけど予想と違って座ったとたんに一気に疲れが押し寄せてきおった。

「あれ、なんかほんまに疲れとるな」
「初めての実戦任務でこんな状況になったんだ。体力以上に精神的な疲れが大きいんだろう。
 それに緊張状態の維持は予想以上に体力を消費する。慣れれば抜き方を覚えその調整もできるようになるが、君はまだ絶対的に経験が足りていないからしかたがないさ」
「そやったか。ほなもしかして三人を先に行かせたのはわたしを休ませるためか?」
「それもある。だがさっき彼女達に言ったことも本当だ。
 もっともシグナムもヴィータも君が疲れていることには気がついていたはずだから最終的に納得したのはそのことと無関係ではないだろうな」

 はぁ、気がつかんうちにずいぶん心配かけておったみたいやな。
 みんなの主としてしっかりせえへんといかんと思っておったんやけどまだまだやな。

「はようみんなの主としてふさわしいように頑張らんとな」
「…僕には十分に見えるが?」
「せやけどクロノ君みたいに上手く指揮できてへんし、戦闘ではみんなにおんぶ抱っこや」

 クロノ君は戦闘もこなすわ指揮能力は高いわ他にもいろいろできるわで羨ましいわ。

「デバイスが完成してないうちはしかたがないし、指揮に関して言えば専門的な勉強を何もしていないのにそれだけできれば十分だ。
 それに君は彼女達の心の支えとなっている。その一点だけでも君が彼女達の主としてふさわしいと言えると思う」
「せやかもしれへんけどやっぱり思ってしまうねん。
 もっとあの子達にわたしができることはないんやろうかって。
 主として衣食住はしっかり与えられとると思うんやけど仕事のことになると足りないことばかりや。
 クロノ君は昔からできるっぽいしわからへんかもしれへんけど」
「馬鹿を言うな。こんな仕事をしていれば力不足を感じることなんか良くあることだ。
 それになのはたちも勘違いしていたらしいがそもそも僕の魔力資質は君達に比べればずっと劣る。
 僕は昔師匠に才能ないとはっきり言われたことがあるぞ」
「ははは、そんな嘘には騙されへんで」

 ダメダメなクロノ君なんて想像もできへん。

「………………」

 ええっと、なんでばれたかとか言わへんのやろ?

「………………」

「も、もしかしてほんまとか?」
「…魔力だけは比較的あるほうだったがそれ以外はまるでダメだそうだ。
 君ぐらいの年のころは出力制御も遠隔操作もなのはほど上手くなかったし、フィジカルも今のフェイトよりも低かったな。
 五歳の頃からずっとやっていたが習得にはかなりの時間がかかったよ」
「……ごめんクロノ君、全く信じられへんわ」

 初めて会った時は海ごと防衛プログラム凍らすわ、模擬戦ではフェイトちゃんやなのはちゃんよりも強いわで弱いクロノ君の姿が思い浮かばへん。

「要は努力すればどうにかなるということだ。
 それに君には指揮官としての適正があるとレティ提督から聞いている。
 どうにかするつもりがあるならいろんな可能性がでてくると思う。ん?」

 あれ、クロノ君の様子がおかしいな。通路の向こうを見て眉を顰めとる。
 何かあったんやろうか?

「クロノ君、どないした?」
「いや、今までよりも精度と範囲を上げて探査していたんだがおかしな反応があった。
 傀儡兵がずいぶん集っているようなんだがそこから動こうとしていない。そこに何かあるのか?」

 何かを守っとるのかな? あるいは取り残された人がいるのかもしれへん。

「クロノ君、わたしはもう大丈夫や。行ってみよ」
「そうだな、全員避難したはずだが確認漏れがあったのかもしれない。
 あるいはそこに何か大切な物があるのかも知れない」

 それほど遠くにあるわけやないし、行って戻ってくるぐらいなら問題あらへんやろ。





 あたり一面傀儡兵だらけ。思った以上におる。

「やれやれ、さっきはここを造った奴は性格が捻くれていると言ったが訂正しよう。
 ここを造った奴は性格が最悪に捻じ曲がっている」

 さすがにそれは言い過ぎやと思うけど、言いたくなる気持ちもわかるわ。
 大き目の広間に並ぶ傀儡兵の数はぱっと見ただけで百はゆうに超えとる。
 わたしらがいる場所は高台になっとるようで下のほうに床が見えとるんやけど数が多すぎてよく見えへん。
 そんでもって極めつけは部屋の中心部にある大きな柱や。
 ヴィータの魔法光と同じ紅い光やけどもっと暗い紅、見ていて嫌になってくるような色や。

「やっぱりあれが動力炉なん?」
「この魔力量、まず間違いないだろうな」

 クロノ君が最悪って言うたのはそういうことや。
 わざわざ結界の発生地点からずらして動力炉を置いておくなんて嫌な奴や。
 しかもあれの魔力が漏れんように柱を中心に小さな結界が張られておって探知できへん。
 周りにいる傀儡兵の魔力が引っかかったから良かったもののそうでなかったら見逃しとったわ。

「まったく、フェイトたちに任せたはずが僕たちのほうにあるとはな。
 はやて、大丈夫か?」
「大丈夫や。魔力はもともと十分やったし体力もだいぶ戻っとる。
 むしろ問題はあれをどうやって封印するかやな」

 周りには山ほど傀儡兵がおるからな。近づくだけでも一苦労や。

「二人でなら近づくのは問題ない。だが封印のためのシークエンスをたどる余裕はなさそうだな。
 せめてこれ以上出てこないなら全部倒してからという手もあるが」
「まずありえへんわな」

 重要なここに現れへんなんてことあるわけあらへん。

「となると後は力技だな。幸いここには僕だけでなくはやてもいることだし」
「わたしが封印するんか? クロノ君のほうが適任とちゃう?」
「いや、ここにある動力炉がある以上フェイトたちのほうも気になる。速攻で決めたい。
 それに下手に僕がやるよりもはやてがやったほうが可能性がある」
「うーん、クロノ君がそう言うんならええけどどないすんの?」

 わたしは封印の経験あらへんからな。
 デバイスにも不安があるし上手くできるやろうか。

「方法は単純だ。君が全速であの柱の中心部、一番光が強い場所に行く。
 そしてそこにある動力炉のコア――おそらくは結晶体のはずだがそれを最大出力の打撃魔法で攻撃する。
 そのまま掴み、魔力放出を最大にして力づくで押さえ込む。
 魔力の強い者でしか行えない方法だが君なら可能のはずだ」
「……クロノ君、わたしはなのはちゃんやフェイトちゃんとは違うんやで」

 なのはちゃんもフェイトちゃんなら喜んで行くんやろうけどあの二人みたいな無茶はわたしにはできへんよ。

「僕としてもこんな方法はとりたくない。
 だが僕が封印するとなるとその時間を君が稼ぐことになる。
 はやてが封印するにしても技術的な面で難しい。おそらくはそれなりに時間がかかるだろう。
 さすがにそれだけの間、僕とはやての両方を守るだけの自信はあまりない。
 となるとこれぐらいしか有効な手段が思いつかない」

 まあこの数を相手に時間稼ぎは嫌やな。
 いっそのこと周りを気にせんでええならラグナロクで一気にって案もあるんやけど、さすがに問題やしな。

「しゃあないなもう、ほなそれで行こ。
 しっかりわたしをあそこまで連れてってや」
「もちろんだ」

 信用しとるで、クロノ君。





 軌道は真っ直ぐ、回避はクロノ君を信じて最大加速で一気に行くで。

「Stinger Snipe」

 クロノ君の魔法が進路上にいる傀儡兵を貫き爆発する。
 着弾から爆発までに若干の猶予があるこの魔法は破壊されたのがわたしの進路に他の傀儡兵が入り込むのを防いでくれとって都合がええ。
 わずかでも時間があれば通り抜けられる。そう簡単には追いつかせへんからな。
 前から三体、クロノ君の魔法弾はもうなくなっとる。
 せやけどすぐに五つの魔力弾が飛んできて撃ち落してくれる。
 視界に映っとるのはあと七体、そのうち三体は間に合わん。
 残り四体。減速すればかわせる。せやけどそうすると今度は後ろから追いつかれてしまう。
 見えへんけどクロノ君も襲われとるはずやからさすがにもうあまり援護は期待できへん。
 最悪一つか二つはもらう覚悟をしとかんとな。
 視界からまた一体消えた。
 一瞬だけ水色の魔法光が輝く。
 そんでわたしに攻撃できるはずやった傀儡兵の動きが止まり、見えへんようになった。
 おかげでもう動力炉とわたしの間を妨げる者はおらん。

 デバイスを左手に持ちかえる。
 魔力圧縮、魔導式演算開始。右手の拳を握り締め、魔力を集中させる。

「シュヴァルツェ・ヴィルクング!」

 わたしの持つ中で最高威力の打撃魔法や。
 わたしはシグナムやヴィータみたいな運動能力はあらへんけど威力だけならひけはとらんはずや。
 紅い魔力光を突き抜けて白い光が広がる。
 せやけどその中でなお紅く光る物がある。これが核やな。
 核の結晶を掴んで魔力の全力放出や。これが止まれば他も止まるはずやから出し惜しみはなしや!





 紅い光が収まりはやての白い魔力光だけが残る。
 どうやら無事に封印できたようだな。これで結界もすぐに消えるはずだ。
 後はこの場からいったん引いて武装局員と合流して駆除だな。

「はやて、ごく――っ!」

 はやての羽が消える。まさか飛行魔法の分の魔力まで使いきったのか!?
 いけない、傀儡兵たちがまだ残っているのに。
 飛行魔法を加速させる。すでにいくつかの傀儡兵が向かっている。
 多少はバリアジャケットで防げるが回避できない状況じゃすぐにもたなくなる。
 間に合うか?
 肩に受けた一撃の衝撃が走るが無視する。ずれた軌道を修正してはやてに向かう。
 僕より先にはやてのところに着くのは四体。数が多い。
 進路を予測、登録魔法起動、演算開始、魔力チャージ、距離はぎりぎり射程範囲、問題は数だ。複数同時展開、負荷増大、無視する。チャージ完了、演算終了、魔法発動、先にはやてに届く物から順に発動、針路変更なし、捕らえた!
 いくら射程内でデュランダルの補佐があるとはいえ四体同時にバインドをかけるのは疲れる。
 だがおかげで間に合ったな。

「まったく、君も無茶をする」
「最大出力でって言うたのクロノ君やないか」

 僕に受け止められたはやては思ったよりか元気そうだった。

「だからって飛行魔法が使えなくなるぐらい魔力を放出するな。
 まったく、あんな短時間で使い尽くすほど出力を維持し続けるなんて信じられない」
「しょうがないやん、無茶苦茶な魔力量やったんやから。
 あれなら至近距離で一発大きいの撃ったほうが良かったわ」
「打撃魔法だから間に合ったんだ。あの状況で砲撃魔法を用意するほどの余裕はない」

 まったく、まだ終わってないというのにずいぶん気楽だな。
 話している間にバインドは解けたし、まだまだかなりの数が残っている。
 結界もどうやらすぐには消えないようでもう少し時間がかかりそうだ。すでに供給済みにエネルギーがあるということか。

「まあいい、後は僕がどうにかしよう」

 はやてを抱えたままもっとも数が少ない場所へ移動する。

「Stinger snipe」

 周囲にいる傀儡兵を一掃、とはいえこれだけいるとさすがに全部は落とせない。
 だがこれで多少は時間が稼げるはずだ。

「デュランダル」
「Ok,Boss」

 魔方陣展開、術式準備、魔力チャージ。

「悠久なる凍土」

   近づいて来ているがまだ距離はある。

「凍てつく棺のうちにて」

 予想よりも速い。間に合うか?

「永遠の眠りを与えよ」

 ぎりぎり間に合ったな。

「凍てつけ!」
「Eternal Coffin」

 目の前の一体を中心に急激に凍りつく。
 冷気は空気中の水分を伝って広間中の傀儡兵を凍りつかせていく。
 全ての傀儡兵を凍らせるのにさほど時間はかからなかった。
 まあそのため広間中が凍りついているが問題はないだろう。

「…クロノ君も十分無茶しとるやん」
「あくまで凍りつかせただけだ。これなら遺跡を壊す心配もない。
 どうやら結界ももうほとんど消えかけている。あとは武装局員に任せるさ」
「そやな、わたしももう魔力ほとんど残ってへんし。
 せやけどとんでもない任務になってしもうたな」

 たしかにこれは実戦経験が闇の書の防衛プログラムとのものしかないはやてにとっては大変な任務だったな。
 フェイトやはやてだけ、たとえなのはがいたとしてもこういう力技が通用しない任務は難しいだろうな。
 まあ、それも経験を積めば三人とも十分こなせるようになるだろうが。
 それにそれはひとまず置いといて……

「はやて、初任務達成おめでとう。よく頑張ったな」
「えっ?」
「君の任務は遺跡の防衛システムを止めることだ。しっかりと核となるロストロギアも確保した。つまり任務は無事完了だ」
「…そやな、わたしもしっかりできたんやな」

 良かった。さっきまでは少し落ち込んでいたがこれで自信も付いただろう。
 なのはにフェイトにはやて、三人ともまだまだこれから先どうなるかわからないからな。
 僕もまだまだ彼女達に負けないように頑張らないとな。

『クロノ君、はやてちゃん、大丈夫!?』
「エイミィか、僕は大丈夫だ」
「わたしも大丈夫やで」

 どうやら完全に結界が解けて通信可能になったみたいだな。

『良かった〜、他のみんなも無事だよ。今武装局員のみんなが突入したところ。
 なのはちゃんのところも来ているよ』
「なのはちゃんもか。やりすぎんとええけど」
『大丈夫大丈夫、あそこの隊長さん、クロノ君よりも強くてクロノ君よりも厳しいから。
 なのはちゃんも大変だってアレックスたちと話してたところだし』
「それはそうと、はやく転送してくれないか?
 見ての通り無事ではあるが周りに敵が残っているんだ」

 いくら氷漬けにしてあると言っても早くこの場から開放されたい。
 出口も一緒に氷が塞いでしまっているからこのままだと出られないんだ。

『主はやて、大丈夫ですか!?』
『はやて、大丈夫か!?』

 うわっ、いきなり大音量で念話を使うな!

『ははは、大丈夫やで二人とも。ちょっと魔力使いすぎてしもうたけど大丈夫や。
 クロノ君がしっかり守ってくれたからな』
『ほらほら二人とも、今はやてちゃんたちの様子を映像で送るから』

 わざわざ映像を送らないでもいいだろうに。とはいえ彼女達も心配性だからな。
 それで安心できるならそれでもいいか。

『…………』
『…………』
『…………』

 どうしたんだ? 画面が繋がったのに何も言ってこないなんて?
 それにどうも様子がおかしいような気がする。

『まあ私はとやかく言うつもりはありませんが……』
『おいクロノ、なんではやてを抱っこしてんだよ!?』

 まったく、そんなことを気にしていたのか。

「はやてがロストロギアを抑えるのに魔力を使いすぎてしまったんだ。
 周りは氷漬けにしてあるから僕が飛行魔法を維持するしかないだろう」
『へ〜』

 な、なんだ? なんだかわからないがフェイトがものすごく不機嫌だぞ。
 今までフェイトがここまで機嫌が悪くなるところは見たことがないぞ。
 い、いったい何があったというんだ?

『はやて、その腕はそういうことだと思ってもいいの?』

 腕? はやての腕はさっきから落ちないように僕の首にまわっているが。この高さだ、念のためはやての方から掴まっていてくれたほうが安全だ。何か問題があるのか?

「あ、あのなフェイトちゃん、これはやな〜〜」
『……そう、分かった』

 何がわかったんだ? ぜんぜん理解できないんだが?

「なあフェイト、僕には何がなんだかわからないんだが説明してくれないか?」
『…………』

 返事がない。本当にどうしたんだ?

『クロノの…バ――――』

 突然轟音、そして震動が伝わってくる。そのせいでフェイトが何か言っているが轟音にかき消されてよく聞こえなかった。
 いや、フェイトが何を言おうとしていたのかも気になるがそれよりも今の揺れは何だ?

『くぉぉぉぉぉらぁぁぁぁぁぁぁ、高町、何やっとるかー!!!!』
『わー! すみませーん』
『えっと、どうもなのはちゃんが壁を撃ち抜いちゃったみたい。幸い崩れはしないですみそうだけど早めに避難しといたほうがよさそうだね』
「…わかった」

 まったく、なのはにも困ったものだな。とはいえなのはのことは向こうに任せてあるから大丈夫だろう。それよりも

「フェイト、さっきは何を言おうとしたんだ? よく聞こえなかったからもう一度頼む」
『知らない!』

 どうも機嫌が悪いみたいだ。しかし本当になんでそんなに機嫌が悪いんだろうか?
 誰か教えてくれないか?



  あとがき

 後半がものすごく息切れしました。そのため文章が淡白に…orz
 とりあえずはやては能力はあるが経験がなく、またデバイスも完成していないのでまだ未熟です。
 クロノとはやてはタイプが似ているようなのではやてにとってクロノが目標になるように話を進めたつもりです。



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