「申し訳ありません、主はやて」
「ええって」
「ごめんなはやて」
「大丈夫やから。ヴィータこそ怪我せえへんようにな」
「ごめんなさいはやてちゃん、今日は帰れそうもありません」
「シャマルも身体に気ぃつけてな」
はあ、どないしようか。
はやてのお泊り
わたしの前に広がっていたスクリーンが消える。
三つあったスクリーンにはそれぞれ違った場所から送られてきた通信の相手を写しとった。
シグナム、ヴィータ、シャマル、三人とも違うところにいっとたのに三人とも今日は帰れんことになってしもうた。
シグナムとヴィータはそれぞれ追っておった相手が捕まりそうやから、シャマルは医療班がらみのデスクワークが終らなさそうやから。
特別捜査官候補生になってもまだ満足に歩けんから現場に出にくいわたしの代わりに出ていてくれとるんやけど、みんな大変やな。わたしもはやく足をよくせんとあかんな。
「今日はみんな帰ってこないの?」
「せやな、今日はザフィーラと二人だけやな」
「…寂しくない?」
フェイトちゃんは優しいな。せやけど心配せんでも大丈夫や。
「大丈夫や、ザフィーラもおるから」
別に一人になるわけやないし、それに明日にはみんな帰ってくるんや。
一日ぐらいなら問題あらへん。
「うん、そうだね」
「せや、そんなことより早く終らさんとクロノ君が怒るで」
今は席をはずしとるけど今日は勉強会の日やからな、とりあえずやっておくように言われた分はやらんと。
それにしてもフェイトちゃんも勉強家やな。執務官試験に備えての勉強やそうやけどわたしのやっとるミッドチルダ式魔法基本技術に比べるとレベルがぜんぜん違うもんな。
クロノ君もかなり熱入れて教えとるそうやし。
おお、噂をすればクロノ君が戻って来おった。
なんやクロノ君宛の荷物が届いたとかで取りに行っとったみたいやけど手紙みたいやな。
せやけどたしかミッドチルダの方やと電子技術がわたしのおる世界よりも進んどるからほとんどが電子メールやってエイミィさんから聞いとったような気がするんやけどな。
「クロノ君、紙の手紙ってミッドチルダで流行っとんの?」
「ああ、これか。次元世界の中では魔法の存在は知っていても科学技術にはあまり詳しくない世界もあるからね、そういう世界からの物はこういう紙が多いんだ」
「ってことはミッドチルダからの手紙やないんか?」
「ああ」
たしかクロノ君はミッドチルダ出身やったよな。通っとった士官学校もミッドチルダにあるそうやしどこからの手紙やろうか?
ちょっと興味あるな。
「ところではやて、今日はシグナムたちが帰ってこないんだって?」
クロノ君の耳にもはいっとったか。
「それで艦長が今日うちに泊まりに来ないかって言っているんだがどうする?」
「え、クロノ君の家にか?」
「ああ、君さえよければだが」
そ、そんないきなりお泊りやなんて。
つまりあれやな、クロノ君と一緒にご飯食べてクロノ君と一緒にテレビ見て、寝巻き姿のクロノ君の姿見てっていつもフェイトちゃんがやっとるだろうことがわたしにもできるんやな。
うん、それは楽しみや。わたしの寝巻き姿を見られるのはちょっと恥ずかしいんやけど。
あ、でもそれやとフェイトちゃん気にせんやろうか?
フェイトちゃんにとってもクロノ君と一緒にいられる時間は大切なんやしそこにわたしがお邪魔してもええんやろうか?
「えっと、フェイトちゃん、ええんか?」
「うん。私も賛成だよ。みんなでいたほうが楽しいから」
「そっか、そうやな。じゃあ今日はお世話になるわ」
ああ、クロノ君の家にお泊りやなんてほんま楽しみや。
一度家に戻ってお泊りの支度をして手伝いに来てくれたフェイトちゃんと一緒にクロノ君の家に来た。
こうしてクロノ君の家に来るのは初めてやな。
「お邪魔します」
「いらっしゃい、はやて、今日のご飯何にしようか?」
「フェイトちゃんが作るんか?」
「うん、私とアルフで作るんだよ」
フェイトちゃんもなかなか料理が上手やったな。
せやけど人に作ってもらうんは慣れへんし、わたしも手伝うか。
「あ、はやては今日お客さんだからゆっくりしていてね」
「わたしも手伝うで」
「でも私の家のキッチン、はやての家のよりも高いよ。車椅子に座ったままだとちょっと大変だと思う」
「あ〜、せやな、私の家のは低くしとるからな。せやけど大丈夫や、それにせっかくクロノ君に冷めとらんご飯を食べてもらう機会なんやからそんぐらいはなんとかするで」
いつもはお弁当やから結構冷めとるからな。ご飯はやっぱり作りたてが一番やから。
「…はやて、クロノは帰ってこないよ」
「え?」
今フェイトちゃんなんて言うた?
「クロノはアースラに残るはずだよ。艦長と執務官の両方がいなくなるわけにはいかないからってお母さんを優先してクロノが残るの。
クロノが帰ってくるのは休みでもなければ月に三四回ぐらいだよ」
「…嘘やろ」
月に三四回って週に一度戻ってくるかどうかやんか。
もう、クロノ君はもうちょっとフェイトちゃんとの時間を作ろうとせなあかんな。
まあフェイトちゃんに必要なのが母親のリンディさんやと思っとるんやろうけど。
せやけどとなるとフェイトちゃんもクロノ君と一緒に過ごす時間はあまりないんやな。
アースラにいる時間が大半やろうな。
うーん、フェイトちゃんがクロノ君と一緒にいる時間が少なくてほっとするべきか兄妹で一緒にいる時間をとらないことに怒るべきか悩むところやな。
「まあええや、手伝えるだけ手伝うわ。それにみんなで作ったほうが楽しいやん」
「うん、お母さんが帰ってきたらすぐに食べられるようにしないと」
「そんなら頑張らんとな」
まあクロノ君がおらんでもせっかくフェイトちゃんの家にお泊りに来たんやから楽しまんとな。
ふう、ええ湯加減やった。
料理も仕上げを残して終えるとお風呂に三人で入って、寝巻きに着替えてあとはリンディさんが戻ってきたら仕上げてご飯やな。
せやけどさすがに三人一緒はちょっと大変やったな。
ん、あそこはクロノ君の部屋やな。かかっとるプレートに書いてあるから間違いないやろ。
……どんなふうになっとるんやろう。
以前一度クロノ君と一緒にインテリア用の小物を買いにいったことがあったけどそれからどうなったんやろう?
気になるなぁ。
「なあフェイトちゃん」
「何?」
「クロノ君の部屋入ったことある?」
「…ないけど」
フェイトちゃんも入ったことないんやな。うーん、やっぱり入らんとわからんやろうな。
「なあ、入れへんかな?」
「は、はやて?」
「だってフェイトちゃんも気にならへん?
クロノ君がどんな部屋で生活しているのかとか」
「そ、それは気になるけど、多分アースラにある執務官室と変わらないと思うよ」
「いや、前にクロノ君と一緒に色々買ってまわったんや。だからその時の物はあるはずや」
「何それ!? 私そんなの聞いてない!」
「せやろ、もしかしたら他にも色々あるかもしれへん。フェイトちゃん気にならへん?」
「…気になる。だけど鍵がかかっているはずだよ」
うーん、それが問題やな。鍵がかかっていないなんてクロノ君に限ってありへんよな。
「やっぱり諦めるしかあらへんか」
「何を諦めるんだ?」
「せやからクロノ君の部屋に入る事や」
「…なんで君は僕の部屋に入ろうと思ったんだ?」
……僕?
そう言えば今の声はフェイトちゃんの声やなかったな。
どちらかというとクロノ君の声やったような気が…………
「ク、クロノ、いつの間に?」
「ク、クロノ君! な、なんでや!?」
たしか今日は帰ってこんはずやなかったんか?
さっきフェイトちゃんはたしかに帰ってこんっていってたはずや。
「さっき戻ったところだ。リビングに行ったらザフィーラとアルフが二人がこっちにいるって教えてくれたんだ。
それよりどうして君達は僕の部屋に入ろうとしてたんだ?」
「そ、そんなことよりどうしたの?
今日はお母さんが帰ってくるはずだったと思ったけど」
「艦長は急ぎの仕事が入った。もともとは本局での書類ミスだったそうだが今日中に出してほしいらしい。
それでなんとか今日中に終わらせる為に残るそうだ。
それでやることが終わっていた僕が代わりにもどることになった。
で、何度も訊くようだがなんで僕の部屋に入ろうとしていたんだ?」
あー、どないしよ、まさかクロノ君が帰ってくるとは思わへんかったしな。
まあなんでなんて訊かれても見たかったからとしかいいようがあらへんしな。
「ほら、前に言ったやんか。フェイトちゃんの友達が来たらクロノ君の部屋も見たがるもんやって。
それにあん時買うたもん、しっかり飾っとるかどうか気になったんや」
「…僕はそんなに信用ないのか。
まあいい、わかった、そんなに言うなら見せるからその前に夕食にしよう。
準備はできているかい?」
「大丈夫や、あとは仕上げるだけやから」
「そうか、なら頼む」
まあ結果的にクロノ君に暖かいご飯食べてもらえるんやからええか。
夕飯を食べたら約束どおりクロノ君のお部屋拝見や。
どんな部屋か楽しみや。
「別に見ても面白いものじゃないが」
「ええって、なあフェイトちゃん」
「う、うん」
「…はぁ」
鍵を開けて中に入る。
まず見えるのが机と本棚に箪笥やな。大きいもんは買わへんかったからこの辺はしかたあらへんな。
ええっと、依然買うたもんはと……うん、使っとるみたいやな。
「本当だ、私の知らない小物が増えてる」
「せやけどわたしの知らんもんもあるな。フェイトちゃんと一緒に買ったんか?」
「ああ、それはこの前フェイトと一緒に出かけた時に買ったものだ。デバイスの交換用の小さなパーツをしまっておくのにちょうど良かったからね」
はあ、なるほど、クロノ君は整備なんかも自分でやるんやな。
うーんそれにしても思っとった以上に殺風景やな。
あまりこっちに返ってこんこともあるんやろうけどさすがに寂しいんとちゃうか。
本棚なんて半分近くが埋まってへん。
しかも入っとるのがこの世界の歴史や文化の参考書やし。多少はミッドチルダの本もある見たいやけど娯楽品はなさそうや。
「なあクロノ君、アルバムとかあらへんの?」
「アルバム? それならほとんどミッドチルダの方に置いてある」
「じゃあこっちにはまったく持ってきてへんのか」
昔のクロノ君の写真とか見てみたかったんやけどな。
「一応最近のはこっちにあるが、そもそも人のアルバムなんか見ても楽しくないだろう」
「そんなことあらへんよ。フェイトちゃんも昔のクロノ君の写真とか見たくあらへん?」
「…ちょっと見たいかな」
「…わかった、だけど見てもつまらないからな」
そんなことあらへん。少なくともわたしやフェイトちゃんにとっては楽しみや。
クロノ君の昔のことなんか全然知らへんもんな。クロノ君って自分のことあまり話さんし。
「ほら、これだ」
「…薄いなぁ」
アルバムなんやしもっと分厚くてもええと思うんやけど。これだと数が多くて大変やろう。
「仕事で忙しいからね、写真なんか撮っている暇もないよ。それぐらいの厚さがあれば十分だよ」
「クロノ、もしかしてこれ一冊だけ?」
「ああ、士官学校の途中からの分だがまだ当分新しいのはいらないだろうな」
仕官学校時代のクロノ君か、それは楽しみやな。
どれどれ……………………
「…………」
「…………」
横にいるフェイトちゃんが眉間にしわを寄せておるし、多分わたしもおんなじような顔してるんやろうけど、しかたあらへんよな。
ほとんどの写真にエイミィさんが一緒におるんやもん。
こんな写真ばっかりやと不機嫌にもなるわ。
「なんでエイミィさんも一緒なんや?」
「エイミィとは仕官学校時代から一緒に行動することが多かったからね。パートナー暦はその頃からだからずいぶん長い」
「たまにエイミィが映っていないのもあるけどこの時はどうだったの?」
「多分エイミィが撮った物じゃないかな? 士官学校時代はほとんど一緒にいたはずだ。
ああ、これはサバイバル演習の時だな。ロイドがロシアンきのことか言って鍋に放り込んでエイミィたちが僕に味見させようとしていた時のだ。
こっちは捕縛演習の時にトップをとった時のだな。
そんなものまであったとは思っていなかったんが、色々残っていたんだな。
ん、どうした二人とも、なんでそんなにむくれているんだ?」
「ふん、クロノ君の気のせいや。わたしはむくれてなんかあらへんもん」
そらむくれもするわ。なんでそんなエイミィさんとの楽しい思い出聞かされなあかんのや。
しかも他の写真もほとんど女の人と一緒やし。
「私もむくれてなんかいないもん」
「いや、そんな顔して言われても説得力が……」
「お兄ちゃんの馬鹿」
「なっ!!?」
お、ダメージうけとる。
でもわたしが言ったってぜんぜん気にせんくせに。ふん。
「フェイトちゃん、カメラあるか?」
「あるよ、今持ってくるね」
「お願いなぁ」
フェイトちゃんも同じ考えみたいやな。
「カメラなんて持ってきてどうするんだ?」
「もちろん撮るんや。わたしとクロノ君、フェイトちゃんとクロノ君の一枚ずつや。
そんでそれを焼き増ししてクロノ君は両方を部屋と執務官室の机にそれぞれ一つずつ飾るんや」
「写真を撮るのは構わないがなんで飾らないといけないんだ?」
「べ、別にええやん」
まさか他の女の子への牽制やとか一緒にとった写真があんまりなくて寂しいとかいつも見ていてほしいからなんて言えるわけないやないか。
クロノ君の馬鹿。
あとがき
GWボケが抜けず最後の方がぐだぐだですみません。
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