ふう、さっぱりした。
 写真を撮って騒いでいる二人を置いて風呂に入ったわけだけど二人はまだ僕の部屋にいるのか。
 さっきは画像データをプリントする為にフェイトの部屋に行ったみたいだがどうなったのだろうか。
 最近特に二人のことがわからなくなる。
 はやてもフェイトも僕のわからない理由で動いているみたいなんだがどういうことなんだ?
 今日の写真のことについてもそうだ。わざわざ写真なんか飾らなくても一緒にいられるんだからいいと思うんだが。




はやてのお泊り 後編




 部屋に戻ると二人は僕の部屋をあさっていた。
 荒らしているようではないがそれでも引き出しを開けたり箪笥を開けて中身を覗いている。

「何をしているんだ君達は」

 一応仕事上の書類や資料、データは置かないようにしているがだからと言って好き勝手されていいというわけではない。
 そもそも人の部屋を漁るのはどうかと思うぞ。

「あ、クロノ、写真立てない?」
「持っていない。フェイト、君は何をしているんだ?
 ほらはやても、なんでベットの下を覗いているんだ?
 わざわざ魔法を使って歩いてまでしてどうして僕の部屋を探す?」
「うん? せっかく印刷したんやしすぐにしまおうと思ったんやけど入れるものがなかったんや。
 わたしたちの分はパスケースに入れるからええんやけどクロノ君の分を入れるもんがないんや」
「アルバムに入れればいいだろう。わざわざ僕の部屋で家捜ししないでくれ」
「アルバムにはもう入れたで。残った分や」

 ああ、飾るように言っていたな。その分か。
 だが僕は写真立てなんか持っていないからな。

「うーん、やっぱりあらへんな。しゃあない、今度クロノ君と一緒に買うてこよう。
 ――っ!?」

 今度はどうしたんだ?
 ようやくこっちの方を見たと思ったら目を見開いて。
 僕を見て驚いたということは僕の何かあるのか?
 変なところでもあっただろうか?

「な、なんでクロノ君とフェイトちゃんの寝巻きが一緒やねん!?
 ペアルックなんか!?」
「色が違うだろ。これはこの前フェイトと買い物に言った時一緒に買ったんだ。
 僕は特に必要なかったんだがフェイトがどうしても言うから。
 フェイトの見立てだから変ではないと思うんだが、おかしいか?」
「格好自体はええんや。問題なのはなんで一緒なんかってことや。
 この前遊びに行った時は私と一緒のもんなんて買わなかったくせに」
「なんで僕がはやてとおそろいの物を買わないといけないのかわからないんだが。
 それにこの前の時はヴィータも一緒だったし買い物にはいかなかったじゃないか」
「そんなことは関係あらへん。フェイトちゃんばっか優遇されすぎや」

 優遇って、フェイトは妹なんだから僕がフェイトを大切にするのは当然だと思うんだが。
 そもそもはやては何について怒っているんだ?

「うう、こうなったらまた一緒に買い物に行くで。
 そんで写真立てを買うついでにおそろいの服も買うんや」

 なんでそうなるんだ。別にはやてと出かけることは嫌じゃないが、おそろいの服は勘弁してほしいんだが。

「ダメ!!」

 僕が口を挟む前にフェイトが叫んだ。今度は何だ?

「はやてばっかりずるい!
 私だってまだ二三回しか二人で出かけてないのに」
「ええやん、わたしなんか一回だけや。それにおそろいの服なんか買うて。
 わたしだって一緒に買い物したいんや」
「したんでしょ」
「しとらん、インテリア買うた時もシャマルが一緒やったしこの前はヴィータも一緒や」

 どうも話が理解できない。二人の間だけで通じる何かがあるみたいだ。

「おい、二人とも」
「クロノは黙ってて!」
「クロノ君は黙っといて!」
「…………」

 うーん、介入できない。
 こういう場合は普通二人の話をしっかり聞くべきなんだがどうもここから放っておいた方がいいような気がする。
 まあフェイトたちだって喧嘩ぐらいする時もあるだろう。
 本人達で解決できそうもない時に話を聞けばいいか。それまでは二人の問題だしな。
 たしかリビングでザフィーラがお茶を飲んでいたし、僕もそっちに行くか。

「じゃあ二人とも、ほどほどにな」

 聞こえていないかもしれない一応言っておかないとな。
 何か用があったら念話で話しかけてくるだろう。




 リビングに戻ろうとすると廊下にザフィーラがいた。
 腕に布団一式を抱えている。
 もともと臨時の駐留基地として用意した場所だから予備の布団は多めに用意したのが残っている。その一つだろう。

「どうしたんだ?」
「ハラオウンか、主の分の布団を用意していたのだがどの部屋に運べばいい?
 テスタロッサの部屋でいいのか?」

 なるほど、そういえばはやての寝床を決めていなかったな。
 客間もあるがはやてもフェイトと同じ部屋のほうがいいだろう。
 どうせならベッドを使うより二人で並んで寝たほうが話もしやすいだろう。

「はやての分はフェイトの部屋に運んでくれ。一応アルフに話を通してくれ。それとフェイトの分の布団も持っていくからスペースを空けといてほしい」
「テスタロッサの分も敷くのか?」
「ああ、どうせなら高さに差があるより並んで寝たほうが話しやすいだろう。
 広さ的には問題ないはずだ」
「わかった」

 さて、僕もフェイトの分の布団を取ってくるか。
 となるとリビングとは逆側だな。

「あれ、クロノ、フェイトたちはどうしたんだい?」
「ああ、アルフか、ちょうど良かった。はやての布団をフェイトの部屋に運ぶから開けておいてくれ」
「もう開けてあるよ。それよりフェイトはクロノの部屋に行ったはずだけどどっか行っちゃったのかい?」
「フェイトなら僕の部屋で何かはやてと言い合っているよ。僕には何がなんだかわからなかったし、彼女達にも色々あるんだろうから放っておいた。
 もしよければ君が話を聞いておいてくれ」
「ふーん、まあだいたい想像つくけどね」
「そうか、さすがだな」

 僕にはまるでわからなかったがアルフはさすがだな。
 フェイトの使い魔だし、一緒にいる時間が長いこともあってフェイトのことを良くわかっている。
 それに比べて僕はダメだな。フェイトとはやてが何をもめているのかもよくわかっていない。
 立派な兄になるにはまだまだ遠いか。

「えい」
「うわぁ! 突然何をするんだ?」
「ふん、どうせくだらないことを考えていたんだろ。フェイトを悲しませたら承知しないからね」
「もちろんだ。僕もフェイトが悲しむ姿は見たくない。だがそれと突然蹴ることのどこに繋がりがあるんだ?」
「さあね、自分で考えな。まったく、フェイトもこんなののどこがいいんだか

 今何か最後にものすごく不愉快なことを言っていたような気がするが良く聞き取れなかった。
 聞き返そうにももう僕の部屋のほうへといってしまっている。
 どうも僕の知らないところで何かが動いているような気がして落ち着かない。
 まあいい、気にしてもしょうがない。早く布団を持って来よう。

 だというのに

「どうして君は布団を持って出てくるんだ?」
「主に呼ばれたのだ」

 布団を持ってフェイトの部屋に向かうとザフィーラが布団を持って部屋から出てきた。
 一度敷きかけた布団をわざわざ畳んで持ってきたらしい。

「まあいい、話は一度置いてから聞こう」

 重量としては問題ないが嵩があるから僕が布団一式を持つのは大変なんだ。
 このままでいるよりも一度落ち着いてからのほうがいい。

「おっと、ちょうど良かった。クロノ、フェイトの分もクロノの部屋に運んでくれよ。
 あたしは自分の分の寝床を持っていくから。
 そんじゃ頼んだよ」

 フェイトの分も僕の部屋に運ぶのか?
 どういうことだ?

「とりあえず運ぶべきだろう」
「そうだな、はやてにしろフェイトにしろ話を聞くのはその後だ」

 まずは運んでからだ。




 部屋に戻るとはやてとフェイトはとうに喧嘩を止めて片付けていた。

「あ、ザフィーラ、クロノ君、布団ありがとな。私とフェイトちゃんもここで眠るんでよろしゅうな」
「なんでわざわざ僕の部屋で。フェイトの部屋でいいだろう」
「あかんあかん、クロノ君も一緒に眠るんや。やあフェイトちゃん」
「うん、ダメ?」

 う、そんな目で見られると断りづらい。
 たしかに仕事で忙しくてフェイトの相手をしてあげる時間もあまり取れなかったんだ。
 こういう時ぐらい甘えさせてあげるべきなんだろうがそれでいいんだろうか?
 まあフェイトは妹だしはやてはフェイトの友人だし構わないといえば構わないんだが。
 ……ふう、まあしかたないか。

「わかった、好きにしてくれ」
「うん」
「おーきにな」

 やれやれ、まあ喜んでくれるなら別にいいか。

「あ、もちろんクロノ君も下で一緒やで♪」
「――っ!?」

 何を言い出すんだ君は!?

「…はやて、床に三枚は敷けないぞ」
「なら二枚で十分や。わたしもフェイトちゃんもまだ小さいんやから余裕はあるで。
 掛け布団だけ三枚あれば大丈夫や」
「いや、待て」
「フェイトちゃん、位置はどないしよか?」
「クロノが真ん中でいいんじゃないかな。それなら公平だし」
「せやな」
「だから勝手に……」
「毛布もって来たよ。ザフィーラ、これあんたの分ね、適当なスペースに寝床作りなよ。
 あ、そういやクロノも下で寝るんだよね。だったらベッドの上に作ろう。
 ザフィーラ、あんたもここにしなよ」
「うむ、そうさせてもらおう」
「ザフィーラ、君まで!」

 まさかザフィーラまで向こうの味方なのか?
 誰も僕の話は聞いていないし止める者も他にいないのか
 いや、ここは頑張って僕がどうにかしなければ。

「はやて、フェイト、それはさすがにどうかと思う。なんなら僕が下で君達二人でベッドを使えばいい。
 三人で川の字になって眠るはやめ――――」
「ダメなの?」
「ダメなんか?」
「………………」

 ああ、だからそんな目で見ないでくれ。く、そうだ、そうだな、さっき僕の部屋で眠るのを許した時点で負けなんだ。
 だから今回も受け入れるしかないんだ。

「わかった、君達の言うとおりにしよう」
「おーきにな、クロノ君」
「ありがとう、クロノ」

 はあ、どうして僕はここで押し切られんるんだ。間違いなく正しいのは僕の意見のはずだぞ。
 それとも兄というのは絶対に妹に勝てないとでも言うのか?




 どうも緊張して眠れない。
 僕の右側にはフェイトが、左側にははやてがいる。
 二人ともつい先ほどまでは楽しそうに話していたがようやく眠りについたようだ。
 だがなぜか話している内に二人の距離が縮まってきて、当然そうなると僕との距離も縮まってくる。
 眠りについてからもなぜか二人が僕のほうに近づいてきていつの間にか僕の布団の奥のほうにまで入り込んで僕の寝巻きを掴んでいる。
 なぜか両側から引っ張られて眠れない状況が続いている。

「クロノく〜ん、これどうや〜……」
「クロノ〜、あれなあに〜……」

 しかもなぜか先ほどから寝言の中に僕の名前が出て来るんだが。
 まあ他にも色々出てきているから僕だけが出ているわけじゃないのは間違いないが、このままだと眠れないな。
 まあ一応二三日ぐらいなら寝ないでも大丈夫なように訓練してあるから大丈夫だろう。

「ヴィータ〜、それはクロノ君の分やで〜」
「クロノ〜、あったか〜い」

 むしろ問題は動けないこの状況だな。

『ザフィーラ、助けてくれ』
『オレもアルフに乗られている。男ならば耐えろ』
『…辛いな』
『そういうものだ』

 はあ、しかたがない。床擦れしないか心配だがこのままにしておくか。

「ぎゅ〜」
「ん〜」

 ちょっと待て、なんでさっきよりも近づいて来るんだ!?
 掴むというよりしがみついているじゃないか。
 ま、まさか朝までこのままなのか?
 いや、なんとしてもはがさないと。

「離さへんで〜」
「ん〜」

 頼むはやて、フェイト、頼むからしがみつくのだけは止めてくれ!





  あとがき

 足りないと思ったので追加しました。
 お泊りなのに眠るところがないのはおかしいと思ったので。
 これで少しはまともになったならいいのだが……
 蛇足ではないと信じたい。

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