わたしがヴィータたちに出会って一年が過ぎた。
 六月四日、それはわたしが生まれた日。それはあの子たちと出会った日、わたしに新しい家族ができた日。
 とてもとても大切な記念日。
 この一年間ははとても良い一年やった。だからきっと、今日からの一年もきっと良い一年になるとええな




 
ハッピーバースデイ




 わたしは一人やったから誕生日といってもおじさんからプレゼントが届いたり、時々石田先生が一緒に祝ってくれたりするだけで、お祝いらしいお祝いをしたことはなかったんや。
 せやけど今年からはヴィータたちがおる。それにすずかちゃんたちもお祝いしてくれる。

「ほらはやて、主役がなにぼーっとしてるのよ」
「すまんな、こんな誕生日会なんて初めてやったから驚いてしもうたんや」
「何言ってるのよ、これから毎年こんな感じよ」
「はは、そうやね」

 誕生日会の会場は閉店後の翠屋、お祝いしてくれとるのはヴィータにシグナム、シャマル、ザフィーラ、すずかちゃんにアリサちゃん、フェイトちゃん、なのはちゃん、アルフさん。それと士郎さんに桃子さん、恭也さんに美由希さん。
 残念やけどクロノ君たちは仕事が入ってこれへんかった。なんでも昨日回収した危険なロストロギアの輸送のため、休暇をとっておいたのに出ないといかんようになってしもうたらしい。
 それでもフェイトちゃんだけはこっちにこれるようにしとったみたいや。

「それじゃあケーキを持ってきましょうか。ヴィータちゃん、なのは、手伝って」
「はーい」

 そういえば料理は出とるのにケーキはあらへんかったな。気がつかへんかったわ。
 奥の厨房からヴィータとなのはちゃん、桃子さんがそれぞれホールのケーキを持ってくる。
 三つもあるんやな。十四人もおるんやけどそれでもちょっと多いような気がする。

「はい、それじゃあヴィータちゃんのに蝋燭を立てましょうか」

 ケーキを置いた桃子さんはヴィータの持ってきたケーキに十本の蝋燭を立てた。

「なあはやて、このケーキ、あたしが作ったんだぜ」
「ほんまか!?」
「おう!」

 驚いて桃子さんの方を見ると首を縦に振ってヴィータの言葉を肯定してくれる。
 そうか、先に来とると思ったらそんなことしとったんやな。

「おーきになヴィータ、ほんまありがとう」

 わたしは嬉しくてヴィータをぎゅっと抱きしめる。
 ヴィータは本当にええ子やな。いままで料理なんかしとらんかったのにわたしのために頑張って。

「はいはい、嬉しいのはわかるけどいつまでもそうしてたら話が進まないでしょう」
「ははは、そうやね」

 つい感極まって抱きしめてもうた。
 まだパーティは始まったばかりなんやから今からこれやあかんな。




 みんなでケーキを食べて、プレゼントをもろうた。
 ケーキは一つはヴィータでもう一つは桃子さんが作ったもんやそうで、最後の一つはなのはちゃんとフェイトちゃんの合作やそうや。
 さすがに桃子さんのが一番おいしかったんやけどヴィータのケーキもとってもおいしかったんやで。

「せやけどザフィーラ、これはちょっと着れへんわ」
「そうですか、アルフに見繕ってもらったのですが」

 ザフィーラからのプレゼントは真っ白なワンピースやった。いつもフェイトちゃんのコーディネイトをしとるらしいアルフさんが選んでくれたんやから多分似合うやろうけどわたしはいつも車椅子やし、あんまし綺麗な服着るのもなと思うんや。
 まあせっかくザフィーラがプレゼントしてくれたんやしリハビリ頑張って歩けるようになったら着ような。

「それでシャマルも洋服なんやな」
「ええ、はやてちゃんにプレゼントする物が決められなくて。本にしようかとも思ったんですけどやっぱりお洋服かなって」

 シャマルがくれたのは若草色のブラウスや。触り心地とかけっこうええから高かったやろうに。
 これはこれで着づらいな。これに合う下はあったやろうか?

「二人ともありがとな、大切にするわ」
「はい」

 ヴィータのプレゼントはさっきのケーキやけど十分すぎるわ。ヴィータの心のこもったケーキやったんやからな。

「それでシグナムのはエプロンか?」
「はい……気にいって頂ければよいのですが」

 実用品なあたりシグナムらしいわ。他のみんなが結構立派なもんプレゼントしてくれとるから気にしとるんやろうか。
 せやけどそのエプロンを広げたらそんな疑問は吹き飛んだ。

「こ、これ…………」
「まだ未熟なもので粗い部分もありますが実用には耐えれるはずです」

 帯との接点やボタンのつけ方なんかはたしかに粗く、市販品にはあらへんことや。せやからそれがこのエプロンが市販品ではあらへんことを示しとる。
 つまりこのエプロンはシグナムがわざわざ縫ってくれたんや。
 それに前面には刺繍とアップリケまでがつけられとる。しかもそのアップリケは……

「リインフォース」

「はい、資料がありませんでしたので私の記憶を漁り作りました。なんとか妥協できるレベルまでにはできたと思うのですが……主はやて!?」

 たしかに実際のリインフォースとは若干異なっておるけど見ればわかる。
 それにリインフォースだけやない、わたしにヴィータ、シグナムにシャマル、ザフィーラにクロノ君、なのはちゃんにフェイトちゃん、アルフさんにユーノ君、それぞれの顔を真似したアップリケまでついとる。
 シグナムはわざわざこんなもんまで作ってくれたんか。
 あかん、嬉しすぎて涙がこぼれとる。

「はやてちゃん……」

 いつかのようになのはちゃんとフェイトちゃん、それにすずかちゃんとアリサちゃんも加わって抱きしめてくれる。
 みんなの前やのに泣いてしもうた。せやけどもう止まらへん。
 もうあれから半年近くも経つのに涙はずっと残っとるんやから。




 あれからようやく落ち着いて、みんなで騒いでおるうちにだいぶ時間が過ぎた。
 そろそろお開きにする時間が来てしもうた。
 ……クロノ君、やっぱり来いへんかったな。
 お仕事やし、危険なロストロギアを他に任せらてこれるような人やないのもわかっとるけどやっぱり来てほしかったな。

「もうだいぶ遅くなったし、そろそろお開きにしましょうか?」
「そうですね、はやてちゃんたちは明日も学校がありますから」
「そうやね」

 わたしも学校やし、シグナムたちも管理局のお仕事があるしな。あまり遅くまでやって寝坊するわけにはいかん。
 使った食器を流しに持って行ってゴミをまとめる。洗うのは桃子さんたちがやっておいてくれるそうや。手伝おうとも思ったんやけどそれよりも早く帰りなさいって言われてもうた。
 残ったケーキともらったプレゼントをシグナムとシャマルが手分けして持ってわたしたちは翠屋を後にした。

「楽しかったね、はやて」
「そうやね、せやけど本当にヴィータたちは何かいらんの?
 今日はわたしの誕生日やけどヴィータたちが来てちょうど一年の記念日やで?」

 せやからわたしもみんなになんかプレゼントしようと思っとったのにみんないらんて言うんやもん。
 わたしがこうして一緒にいてくれるだけでええってそんなんわたしだって同じなのに。
 料理も今日は手ぇ出させてもらえんかったし。

「平気だよはやて、あたしはいつもはやてに色々してもらっているもん」
「せやけどみんなの衣食住保障すんのは主として当然やし、家族なんやからもっとこうまがまま言ってもええんやで」
「それは承知しています。ですが今日の主役はやはり主はやてです」
「そうですよ。それに私達だって十分に楽しんでいますよ。私達がこうしていられるのもはやてちゃんのおかげなんですから」

 うーん、そうは言ってもな。もらいっぱなしっていうんも嫌やし、みんなの世話になっとるのはわたしやって同じなんやからなんかしたいんよな。
 と、そんなこんなでもう家やな。ん、門の前に誰かおるな?
 て、あれはクロノ君!?

「ハラオウン執務官、どうしてここに?」

 シグナムも驚いとる。クロノ君は今日これへんって言うとったし、来るにしても今日は翠屋でパーティーしとるのは知っとるはずやから翠屋に来るはずや。
 なんで家の前で待っとるんや?

「先ほど一段落ついてね。艦長やエイミィが行ってこいって言うものだから。
 それでフェイトに連絡したらもう帰ったって言うものだからこっちで待たせてもらった。
 それよりはやて、誕生日おめでとう」
「お、おーきに、ありがとな」

 よく見ればクロノ君の格好はいつもの執務官服や。ほんまに急いで着てくれたみたいや。

「たいした物じゃないがこれはプレゼントだ。こういうことは慣れてないからあまり期待しないでくれ」
「そんなん気にせんでええよ。ありがとな。それよりクロノ君、上がっていかん?」
「いや、まだ後処理が残っているから速めに戻らないと」
「まあまあいいじゃないですか。それなら私達も手伝いますから上がっていってください。ザフィーラ、荷物の方お願いね」
「任せておけ」
「え、いや、僕は……」
「ハラオウン執務官、いいから上がっていけ。ヴィータの作ったケーキも残っている」
「そうだぜ、あたしがはやての為に作った渾身のケーキを特別に食わせてやるぞ」

 あー、みんな結構強引やね。まあクロノ君が上がってくれたんやからええか。




 シャマルが淹れてくれた紅茶を飲みながらヴィータのケーキを食べる。
 シャマルとシグナムははクロノ君の代わりにアースラに行って何か手伝いに行くそうや。ヴィータはタイヤ拭いたらもうだいぶ眠くなったみたいでさっきから船を漕いどる。ザフィーラは大型犬になってそんなヴィータを背中に乗せて運んでいった。
 みんな気ぃきかせてくれたんかもしれんがクロノ君と久しぶりに二人っきりや。

「ヴィータも意外と料理ができたんだな」
「ははは、それはヴィータに失礼やで」
「すまない、どうもヴィータは作るよりも食べる方のイメージがある」
「それはそうやけどヴィータにも簡単な料理は教えとるんやで。それに今回は桃子さんの指導もあったんやて」
「なるほど」

 ああ、会話は続かへん。話すことはなんでもあるはずやし、フェイトちゃんとかなのはちゃんと一緒にいる時は話題なんてぽんぽん出てくるのに。
「そうや、プレゼント見てもええか?」
「ああ、いいよ」

 ほな失礼して。
 クロノ君のプレゼントは何やろうか?
 紙袋を開けると中には綺麗な布が入っていた。取り出してみるとどうやらスカーフみたいや。それが六枚。
 一枚目は真っ白で、所々に微妙に色の違う糸で白い花が描かれとる。
 二枚目は赤い布にやっぱり同じように色の違う糸で赤い花が描かれとる。他にも青に緑に薄紫と同じように単色の布地にわずかに違う色で花が描かれとる。
 どうやら全部同じ物の色違いのセットのようや。
 せやけどその配色の意味にはすぐに思い当たった。
 白はわたし、赤はヴィータ、青はザフィーラ、緑はシャマル、薄紫はシグナムの色や。

「もしかしてこれ……」
「ああ、最初は君の分のことだけを考えていたんだが彼女達が君の元に現れてちょうど一周年だろ。それならばみんなにも何かあったほうがいいと思ったんだ。
 それならみんなおそろいのほうがいいと思ってね。それなら小型犬フォルムのザフィーラもつけれるだろう」
「うん、そうやね。わたしもみんなになんか渡したいと思っておったしちょうどええ」

 クロノ君もちゃんとみんなのことも考えておってくれたんやな。ほんまにありがとな。
 ん、そういえばもう一枚あったんやよな、あれは何やろう?
 不思議に思って最後の一枚を取り出して、わたしは息を飲んだ。クロノ君も驚いた顔をしている。

「こ、これ……」

 最後の一枚もデザインは同じやった。違うのはやっぱり色だけ。せやけどそのスカーフの色は黒、あの子の色や。
「しまった、抜きそびれていたか」
「どういうことなん?」
「いや、最初は六人分で買ったんだ。だけど彼女はもういないし、渡してもはやてに辛いことを思い出させるだけかと思って止めようとしたんだが……

 忙しくて別にしておくのを忘れていた。
 そう言うたのを聞き逃さなかった。

「は、はやて、頼むから泣かないでくれ!」
「ご、ごめんな」

 うう、泣くつもりやなかったんや。それに別に悲しいだけが理由でもないんや。
 あの子がもうおらんのはわかっとる。あの子のことを思い出すと悲しくなるのは確かや。せやけどシグナムもそうやったけどこうしてあの子のことを忘れずに、わたしの家族として扱ってくれとるのが嬉しいだけや。

「すまない、僕が軽率だった」
「ほんまやで」

 いきなりこんなん出されてもうたらまた泣いてしまうやんか。

「罰としてこれはクロノ君がつけるんや」
「ぼ、僕がか?」
「そうや、今作っとる子は黒にならん予定やし、これがあっても余ってしまうだけやん。せやからこれはクロノ君がつけるんや」
「……わかった、それで君の気が済むのなら」

 わたしから受け取ろうとするクロノ君の腕をすり抜け、わたしはクロノ君の首に手をそえる。
 そして黒のスカーフをクロノ君の首に巻き、前で軽く結んで留める。

「うん、似合っておるで」

 そう言いながらわたしも自分の白いスカーフを同じように首に巻く。

「これでお揃いやね」
「そうだな」

 クロノ君が優しく笑ってくれる。
 リインフォース、わたしは大丈夫やで。騎士のみんなと一緒に元気にやっとるで。
 なのはちゃんもフェイトちゃんもすずかちゃんもアリサちゃんもおる。学校のみんなや管理局の人たちもおる。
 それに、クロノ君もこうして一緒にいてくれとる。だから大丈夫やからな。







  あとがき

 はやて誕生日。クロノのプレゼントを考えるのが一番大変だった。

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