こんなことになったのはいつからだっただろう
「それでね、北川君」
「それでですね、北川さん」
相沢が転校してきてからだったか、それとも二年に上がった時からだったか
「祐一たらひどいんだよー!」
「お姉ちゃんたらひどいんですよー!」
自分はただの何の変哲もない高校生のはずなのに
「最近朝の起こし方もぞんざいだし、今朝なんて私のイチゴジャム取り上げるし」
「モデルをやってくれないからこっそり見ながら描いていたら、私の絵を見もせずに捨てたんですよ」
学校行って、バイトに行って、遊びに行って適度な高校生活をすごしているだけなのに
「祐一、私のこと嫌いになっちゃったのかな?」
「やっぱり、お姉ちゃんは私のこと嫌いなんでしょうか?」
どうして彼女たちの相談を受けることになっているのだろう?
北川相談所
オレは今、百花屋にて水瀬と栞ちゃんと向かい合って座っている。
一見すると男一人に女の子二人、しかも二人ともかなりかわいい部類に入るのだから野郎が見たら嫉妬しかねない状況だろう。
しかし今オレが嫉妬の視線にさらされていないのはテーブルの上の状況によるものだろう。
なんせイチゴサンデーの空容器が四つ、バニラアイスが乗っていた皿が六つも積まれているのだから。
しかもこの代金全部オレもちである。
むしろ哀れみの視線を感じる。
二人がここにいるのは実はオレに相談したいことがあるかららしい。
実はこういったことはそれほど珍しいことでもない。
なぜかオレは二年に上がったころからクラスメイトの相談を受けるようになっていた。
大半は愚痴を言うだけ言ってすっきりして帰っていくのだが、たまに本気でオレの意見をききたがるやつもいる。しかもほぼ全員が人間関係に関してである。
なぜオレに聞くのかが疑問なのだが、それを訊くとおまえが一番頼りになりそうだからという答えが返ってきてしまい、ますます謎が深まっていく。
しかも去年の冬、相沢が転校してきてからその数が急に増えだした。どうもあいつの周りには人間関係が不安定なやつが多いらしい。
たとえば今いる水瀬は従兄妹であり恋人である相沢との関係
栞ちゃんは姉である美坂との関係
相沢に連れて行かれて水瀬の家に行ったときに会った真琴ちゃんは人見知りなところと養母である秋子さんとの関係
相沢と久瀬の一件で知り合った川澄先輩は親友である倉田先輩や一時期争った久瀬との関係
やはり相沢に連れて行かれて病院で会ったあゆちゃんは初恋の相手である相沢やその恋人であり、これからお世話になる家の娘である水瀬との関係といったところだ。
他にもいろいろあるが、それは置いておこう。
さて話を戻すと今は水瀬と栞ちゃんの相談を受けているわけだ。
これが愚痴だけで終わるといいんだが、どうやら今日はそうもいかないようだ。
さて二人のことを整理しておこう。
まず水瀬、こっちはもちろん相沢とのことで相談しにきている。
話としては最近相沢が水瀬にたいして冷たくなったらしい。ちなみに相沢からも似たようなことを相談されたが、オレから見る限り二人はこれでもかというくらいに仲がいい。なんというか気心の知れた仲で、相手のことを分かり合っている。クラスにも水瀬のことが好きだったやつは結構いたが、二人の仲に嫉妬しているやつは少なくともオレが知る限りではいない。妬ましいというよりは微笑ましくみえるらしい。
まあそれでも些細なことが気になるらしく、こうして相談しに来るのだが、話の半分が惚気になるあたり二人の中は心配ないだろう。
次に栞ちゃん、こっちは美坂のことできているのだがちょっと事情が複雑だ。
詳しくは知らないが栞ちゃんはほんとは助かるはずがなく、美坂は栞ちゃんの存在を否定していたらしい。
それが助かってしまい、二人の仲はしばらくの間ギクシャクしていた。栞ちゃんは美坂のことを心配していたし、美坂は栞ちゃんをどう扱ったらいいかがわからなくなっていた。
それでも最近は二人の中も自然なものになってきて、周りの人間も安心している。
それでもやはり栞ちゃんとしては不安らしく、こうして時々相談しに来る。
まあオレが見る限りじゃ二人は仲のいい姉妹で、多少のいざこざも相沢と水瀬のと同様に気心の知れた仲だからこそのものだと思う。
「まあ相沢のことだから照れくさいんだろう」
「そうかな」
「ああ、この前相沢を斉藤と二人でからかった時、あいつの顔、真っ赤になっていたし間違いないだろう」
「そうだね、祐一ってその場の勢いで行動してあとから恥ずかしがってるから」
水瀬にも思い当たることがあるようで、少し顔を赤くしながら笑っている。まあさぞかし恥ずかしいことをしたのだろう、相沢のやつは。
「美坂のほうは最初は栞ちゃんの扱いにとまどっていたんだからそう言ったこともできるようになったってことは栞ちゃんという存在を受け入れて、自然に接せられるようになったって事だろう」
「うう、そうかもしれませんけど、その結果嫌われているのかもしれないじゃないですか?」
栞ちゃんは結構お姉ちゃんっ子だからな、美坂に甘えたいんだろう。
「でも美坂はなんだかんだ言って栞ちゃんが困っているときは手伝ってくれるんだろう?」
「まあ、そうですけど……でも言い方がきついんですよ」
うーん、最近わかったことだが美坂も結構照れ屋なんだよな。特に栞ちゃんにかんすることで。
「安心していいって、きっとあんまりかわいがるのも恥ずかしいんだろ」
「あ、そうかもしれませんね」
栞ちゃんが嬉しそうに微笑む。家での美坂のことでも思い浮かべているのだろう。
まあ結局のところ俺にできることなんかそんなにないわけで、こうやって相手が喜びそうなことを言ってやれば本人たちも満足してくれる。どうせオレから見れば仲がいい事は変わらない。オレのところにやってくる相談なんてそんな些細なことだ。
ま、この二人の笑顔をみれば、それで幸せになってくれるならかまわないかとも思う。
まあせいぜいオレはオレにできることでもやりましょうかね。
あとがき
ええっと、ライトの初SSです。はっきり言ってヤマもなければオチもありません。本当にただ書いただけのものです。
最後まで読んでくれた方に感謝します。
あと、御意見、感想を掲示板か便りに出してくれると嬉しいです。
これからも時々書きたいと思います。
それでは
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