アキラたちがやってきて一週間経った。四人はその間それぞれの機体のテストパイロットとしての仕事をこなしていた。最初の険悪さから心配されたレイイチとライナスの仲もライナスがアキラを認めたためそれ以降は上手くいっている。
そんななか、ユイのもとに一つの問題が転がり込んできた。
「ユイ、どうしたの?」
「あ、皆さんお呼びしてすみません。お仕事です」
その言葉にユイに呼ばれてやってきた四人の顔が真剣なものになる。
「実は第五研究所の研究員の一人がBFのデータを横流ししていたことが判明しました」
「データの横流しって、他所の会社に?」
「いえ、それだったらまだ良かったのですが……」
ユイの表情が暗く沈む。それを見て四人は嫌な予感を感じた。他所の会社に技術を奪われるより大変となるとその行き先にもある程度想像がつく。
「ねえユイ、まさかその横流し先って……」
「はい、たぶん想像通りだと思いますが…宇宙海賊です」
宇宙海賊、それは航宙技術の発展と惑星表面のドーム都市の建造にともない各惑星間をいくつもの宇宙船が飛ぶようになったことで現れ始めた盗賊である。その多くは大きめの小惑星の内側に基地を造っており発見が困難であり、都市を直接襲わずに宇宙を航海する宇宙船を狙ってくるため防ぎにくい、テロリストについで問題となっている連中である。
そんな連中にBFのデータが横流しされていたとなれば大問題である。さすがにロニアス社全体が疑われはしないだろうが、第五研究所はかなりの被害を負うことになるだろう。
「すでにその研究員は捕まえてあります。軍の方からの情報と彼の証言を元にその海賊のアジトをはじき出し、偵察機を使って確認をしてあります。私達の仕事は他の警備部と協力してこの海賊を殲滅することです」
「規模はわかるのか?」
「不明です。ですが少なくとも戦艦が三隻、空母が一隻はあるそうです」
「げー」
ライナスの質問に答えたユイの言葉にミリアが不満の声を上げる。戦艦三隻も脅威だが空母があるということはその分のBFか戦闘機があるということだ。空母に積めるBFの数は少ないものでも十二機、多いものでは二十四機になる。
「ちなみにこっちは?」
「戦艦が二隻に巡洋艦が一隻、それと軍から監視用に戦艦が一隻来ます。BFはアキラさんたちを含めてBFは十二機と六機、戦闘機が十二機です」
「敵のテリトリー内でこちらのほうが数が少ないとなると厄介だぞ」
不利な状況にライナスは泣きたくなるが、この中になんとも思っていないやつもいる。
「戦艦一隻あたり四機として三隻で十二機、空母が二十四機で三十六機。予備として保管されている分があるとして十二機ぐらいか。だいたい四十八機てところか?」
「でもそんなにたくさんパイロットがいるのかな? たぶん半分ぐらいはAI制御の無人機だと思うよ」
「だったら連中によっぽどとんでもない天才プログラマーでもいない限り半分くらいは雑魚だってことだな」
「うん、今の技術じゃ複雑な行動を行えるAIは造られていないから」
「あんたら少しは慌てなさいよ!」
淡々と相手について話し合うアキラとレイイチにミリアが怒鳴った。
「だってミリア、慌ててもしょうがないじゃないか」
「そうだぞ、だいたい量産機の四十八機ぐらい半分をオレが落として三分の一をおまえが落とせば残りたった六機だぞ。いくら向こうの方が土地勘があるといってもそんぐらいアキラとライナスの二人で十分だろう」
「…それはそうかもしれないけどさ」
「いや、いくらなんでもひとりで二十機は無理だろう」
頭を抱えて悩み始めるミリアを見てライナスが唸る。
だが残念なことに今までライナスが持っていた常識でものを考えてくれる人間はここには一人もいないのだ。
「ドクター、同じAIを積んで戦わせた場合オレらの機体と量産機ではどのくらいの差がある?」
「そうだね〜、提出された資料から見る限りではカマエルなら第五研究所で開発していたヴァーチャーの最新型が相手として三機、ハミエルなら九機、ラグエルでも六機はいけるね。メタトロンは“あれ”を使う暇があれば十二機はいくよ」
その言葉にユイが首をかしげた。
「カマエルが一番低いんですか?」
「ま〜ね〜、カマエルはレイイチ君も含めて一つの機体になるからね〜」
一つ一つのパーツの性能を技術の限り突き詰めたカマエルは各パーツの性能はいいのだが各パーツ全てが自分を中心に性能を発揮するため、完成したBFはとてもではないがまともな性能が望めるようなものではなかった。そのためAIを乗せても各パーツの性能を十分に発揮することはできないのだ。
「それはおいといて。とりあえずこの状況でも三十機ぐらいは落とせるみたいだからきっと何とかなるよ。僕も精一杯頑張るから」
アキラがみんなを見回すと、レイイチは変わらず、ミリアはもう開き直った感じで、ライナスは頭を抱えながらも笑みを浮かべていた。
そんななか、ミリアが一つの疑問をあげた。
「そこまでどうやって行くの?」
それにはユイがすぐに答えてくれた。
「それでは皆さんを地下ドックに案内します」
「これが今回皆さんに乗っていただく戦艦、ガルガリンA−U改です」
アキラたちがユイに案内されてやってきたのは地下エリアの中でも今まで立ち入り禁止になっていた区域だ。そこにはロニアス社製の高速戦艦ガルガリンアタッカー、通称ガルガリンAの二号機があった。
「任務上少しでも早く目的地にたどり着けるように足の速いものをまわしてもらいました。しかし乗せるのは四機だけですが通常のBFよりもサイズが大きいので格納庫とエンジンを改造してあります」
「なるほどな、こりゃ速そうだわ」
「うん、ガルガリンAは直進力がすごいからね」
ユイの説明を聞いてアキラとレイイチが感想を漏らす。
「でもたしか武装が全部前を向いているから単独では使いづらいんじゃなかったっけ?」
「ああ、たしかフィールドも前面にしか張れないから突撃戦艦とも呼ばれているはずだ。軍なら後方から援護射撃を受けながら突っ込むか前面に展開して即席の盾に使うかぐらいしか使わないな」
ミリアとライナスはこの選択に少々疑問があるようだ。もっとも文句を言ったところで変わるわけではないしあんまり文句を言うとレイイチが怒るので強くはいわない。とりあえず後ろに注意しておこうと思っておく。
「機体の積み込みが終わるまであと一時間ぐらいかかります。その後目標最寄のステーションで他の警備艦隊と合流して簡単な打ち合わせの後襲撃します。ですから急で申し訳ないですが支度を済まして一時間後にここに集合してください」
「了解」
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