ロニアス警備隊の先頭を突き進むのはアキラたち四人。先頭に接近戦に特化したミリアのハミエル、その後ろにレイイチのカマエルが付き、アキラのメタトロンとライナスのラグエルが続いている。
 普通に考えて同じ量産機同士での戦いである以上数が多く地の利をいかせる相手のほうが有利である。それはつまり他の警備隊たちにとってはこの戦いは辛いものであるということであり、被害の大きさは専用機を持つ四人の活躍にかかっていると言えるのである。

「せいっ!」

 敵のBFのすぐ近くまで来るとミリアはパワー用の通常よりも出力の高いエネルギーソードを二本抜き、バーニアを吹かし推進力を武器に突っ込んでいく。そしてすれ違う時にエネルギーソードを展開しあっさりと切り裂いて機能を停止させた。

「たいしたことないみたいね」
「やっぱり大半はAI制御みたいだね」
「ああそれも予想よりもお粗末なものだな」
「これならなんとかなるかもな」

 四人とも近くにやってきたBFを手当たりしだい落としていく。特にレイイチやミリアにかかっていったBFは距離をとろうと接近戦を仕掛けようと関係なくエネルギーソードの餌食になっていく。

「ここは大丈夫みたいだけど他の場所は大変みたいだよ」

 ある程度落としたところで戦闘宙域全体を見ていたアキラが言ってくる。

「ここより他のところがやりやすいのがわかったみたいね」
「しかもオレらのところにいる連中も射程ぎりぎりの距離を確保しやがる」

 わざわざアキラたちのいる場所を避けていく敵のBFたちと射程ぎりぎりの距離をとり続ける砲戦用装備に換装しているヴァーチャーVがこちらを牽制してくるのを見てミリアとライナスは苛立ちを覚える。

「アキラ、姫さんのところは大丈夫か?」
「うん、まだそこまでは行っていない。でも時間の問題かもしれない」

 アキラたちが出撃してすぐに後ろのほうに下がったガルガリンA−U改は敵戦艦に向けて砲撃を繰り返している。その前にあるBF群によって敵のBFが侵入していくのは防がれているようだった。

「ねえみんな、ここはいったんばらばらに行動しようと思うんだけどどう思う?」
「あたしは賛成、少しでも落とさないと被害が増えるわ。それに相手も思ったほどたいしたことないみたいだし」
「同感だ。本来なら集団で行動するべきだが敵が広がりすぎてそれだと効率が悪い」

 アキラの提案に二人も賛成する。もちろんレイイチはわざわざ答えるまでもなくアキラの指示に従うつもりだ。

「それじゃああたしはまず目の前の連中を叩き潰してくるわ」
「あれは有人機みたいだから油断すんなよ。オレは味方の戦艦の近くにいる奴を相手してから早めにいったん補給に戻るぞ」

 そうしてミリアは射程ぎりぎりを維持しようとするヴァーチャーVどもに突進して行き、ライナスは押され気味の味方の援護に向かった。そしてアキラとレイイチの二人が残った。

「レイイチ、ちょっと無茶を頼んでもいい?」
「いつも言っているだろ、そんなこと気にするなって」

 言いにくそうにするアキラに対してレイイチは自信を持って応える。例え他の者から見て死ねと言っているようにしか聞こえないものでもレイイチは叶えてやろうといつも思っているので無茶だろうがなんだろうが気にしないのだ。

「敵の空母を落とせるかな? あれがなくなれば向こうは補給があまりできなくなると思うんだ。基地まで往復するとなると結構エネルギーを食うはずだし、時間も稼げるから」
「わかった、行ってくる」

 敵の大半が待っているであろう敵空母を単独で攻めろなどと言うとんでもない要求をレイイチは近くの店までお使いに行くかのように引き受けた。

「エネルギーは大丈夫?」
「十分だな。アキラのほうもそうだろ?」
「うん」

 敵空母までの距離はそこまであるわけではないが途中の戦闘まで考えたら普通のBFならば今までの分も含めて足りなくなってもおかしくない。だがアキラたちの機体に積んであるジェネレーターはアイザックの傑作であり、通常のジェネレーターよりもはるかに稼働時間が長いので二人にはまだまだ余裕があるのだ。

「僕は一応ユイのところまで戻っておく。隙を見て“あれ”を使おうと思うから」
「おうやれやれ、盛大にぶっ放してやれ」
「うん」

 そしてアキラはガルガリンA−U改のもとに向かい、レイイチは敵空母に向けて動き出した。





 一部では押し、一部では押され、全体を見れば互角の戦いを繰り広げている。
 だがそれに波紋を起こす存在がこの場にやって来ていた。
 それに最初に気がついたのは四機中最も優れたレーダーを持っていたメタトロンに乗っているアキラだった。

「この反応は……戦艦!?」

 メタトロンのレーダーはこの宙域全体を捉えていた。今の状況は互いに正面からぶつかり合い、ロニアス警備隊が海賊のBFの攻撃を防ぎながら敵戦艦に砲戦を仕掛けている。つまり互いに戦力は正面に向けられ横や後ろはほとんど戦力がない。特に数で劣るロニアス警備隊はまったくないと言っていい。
 その無防備な後ろと両側面から新たに戦艦が一隻ずつ向かってきている。
 そして後ろからやってくる戦艦に一番近い位置にいるのはユイ乗っているガルガリンA−U改だ。ガルガリンA−U改に積んであるレーダーはメタトロンのものよりも若干劣る。今気がついたとしても戦力が前面に集っているガルガリンA−U改では辛い。そしてガルガリンA−U改の援護に間に合いそうなのはアキラの乗るメタトロンしかいない。
 一機で戦艦一つを相手にするのは辛い。だからといってレイイチを呼び戻すわけにはいかない。今レイイチがしているのはこの戦いで勝つのに必要なことだからだ。ミリアやライナスには側面から来る戦艦に対処してもらわなければいけない。一人で何とかするしかない。

「ミリア、ライナス、両側面から新たな敵が来る。注意して」

 二人に通信を入れながらアキラはメタトロンを全力で飛ばす。ユイを助けるために。





 アキラがユイのもとに来るよりも早く敵の戦艦はガルガリンA−U改にむけて発砲してきた。だがガルガリンA−U改はそれまでに何とか側面を向けるところまで方向転換をしており、何とか回避することができた。しかしこの向きでは相手に向かって攻撃することができないのでいずれはやられてしまう。
 だからといってやられるつもりはガルガリンA−U改に乗っている誰にもない。メタトロンの接近をわかっているのでそれまでぐらいはもって見せるだけの自信があった。
 だがその自信を揺るがせるものを向こうは出してきた。
 それは一機のBF。だがその一機が問題だった。
 他のBFの1.5倍ぐらいの大きさを誇る巨大なBF。サイズで言うならばアキラたちの乗る専用機も同じぐらいなのだがそのBFの名前はあまりに有名だった。ガルガリンA−U改のクルー達に恐怖を覚えさせるぐらい。
 そのBFの名前はドミニオン。製造から三年が過ぎてなお最強の量産機と呼ばれている最高クラスのBFであった。


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