両肩のキャノン砲と片腕を失ったドミニオンが密着しているカマエルの右手のケブラーから伸びるエネルギークローに頭を貫かれている。カマエルはドミニオンをつかんだまま空母へと向かっていた。
 周りにいるBFが撃ち落そうとしたのだが、その大半はドミニオンに当たってしまい被害を大きくさせていた。ドミニオンはバーニアまで潰されていたが機能が停止したわけではなく、中にいるパイロットもまだ生きているため、海賊達も思い切って攻撃できないでいた。
 空母が近づいてきてもカマエルは減速をしない。空母の艦長はドミニオンのパイロットを見捨てることにしたらしく機銃を使って撃ち落そうとしてくる。普段ならばそんなものをくらうレイイチではないが今は前にドミニオンがいるので視野が狭く、かわすのは困難だ。だがそれでもレイイチは止まらない。盾になっているドミニオンの装甲はカマエルよりも厚く、例え戦艦といえども空母の機銃ぐらいならばかなり持つ。

「レフト・フレイル!」

 レイイチの声に従ってドミニオンの腹部にあてられた左手のケブラーがエネルギーフィールドをまとう。
 それと同時に右手のエネルギークローが消え、ドミニオンが解放される。だがその開放は一瞬、フィールドを張り終わったレフト・ケブラーが突然飛び出した。レフト・ケブラーはそのままドミニオンを押しやり、空母に向けて飛んでいく。突然今まで以上の速さで近づいてくるドミニオンに機銃が集中するが、ろくに照準をつけることもできないまま撃たれた機銃はかすりもしない。レフト・ケブラーと左腕をつなぐためのワイヤーがのびきると、レフト・ケブラーは止まったがその運動エネルギーを受け継いだドミニオンはそのまま空母の装甲にぶつかった。
 ワイヤーを左腕に内蔵されたウインチで巻き上げながらカマエルはドミニオンの後を追って空母に向かってきていた。機銃がドミニオンに集中していたためにカマエルに向かってくる弾はない。ドミニオンが装甲にぶつかったころになってようやく何人かがカマエルに向かって弾幕を張り始めたがそんなものに当たってくれるレイイチではない。エネルギークローを消した後にすでに切り替えてあったエネルギーマシンガンをドミニオンに向けて乱射する。
 何十発ものエネルギー弾はドミニオンに突き刺さり、そのうちの何発かがジェネレーターを直撃した。そしてドミニオンは爆発した、後ろの空母を巻き込んで。
 爆発を見てこれだけでは沈まないと判断したレイイチはさらに畳み掛けるようにエネルギーマシンガンを爆発の中に撃ち続ける。レフト・ケブラーもすでにエネルギーマシンガンに変えてある。
 空母を落とされまいとよってくるBFに時折銃口を向けて落としながら確実に空母の中は壊されていく。
 そして、ついに空母も爆発した。
 それを確認したレイイチは残ったBFを無視してガルガリンA−2改に向けて飛んで行った。





 キャノン砲を失ったドミニオンはエネルギーガンとエネルギーソードを構えてメタトロンに向かってくる。アキラはそれを迎え撃つべくこちらもエネルギーガンとエネルギーソードを構える。メタトロンは長距離戦闘用に特化した機体であるが、機体性能ではたとえ格闘戦に持ち込まれてもドミニオンとメタトロンは互角に戦えるのだ。

 アキラたちの乗る四機のBFは完全に一から設計されたものではなく、セレスティアシリーズのデータを基に設計された物である。
 たとえばハミエルはパワーをベースにして発展させた機体で近接戦闘に特化した性能はドミニオンさえはるかに凌ぐ。
 ラグエルはプリンシパリティとヴァーチャーを基にした機体で高レベルの情報収集能力と換装システムを持つ。
 カマエルはアークエンジェルを基にしてアイザックが趣味に走った機体であるが乗り手を選ぶということを除けばその汎用性は高い。
 そしてメタトロンのベースとされたBFは他ならぬドミニオンであった。最強の量産機であるドミニオンをさらに発展させ、遠距離戦闘能力を強化したのがメタトロンなのだ。

 ドミニオンが放つエネルギー弾をかわして懐に飛び込みエネルギーソードを振るう。だがそれは受け止められ、至近距離から頭部マシンガンが放たれる。メタトロンの装甲に対しては意味のない攻撃であるが射線にはセンサー類の集った頭部がある。センサー部分は壊れやすいので頭部マシンガンでも十分な効果がある。メタトロンは距離をとってかわし、エネルギーガンを撃つ。だがそれもかわされてしまう。
 二機は同時にエネルギーガンを捨ててガトリングガンを構えた。威力のあるエネルギーガンよりも当てやすいガトリングガンを選んだのだ。
 この距離でのガトリングガンの直撃はかなりのダメージになるので、相手の射撃から逃れるために両方が距離をとる。だがアキラがある程度距離をとったところでドミニオンは距離を詰めてきた。

「くっ、この距離じゃまだ危険なのに」

 ドミニオンのパイロットが選んだ距離はまだガトリングガンが十分な威力を持っていた。アキラとしてはもう少し距離をとり、かわせるだけの余裕がほしかったのだがそのための距離を取らせてくれそうもなかった。
 ドミニオンのパイロットも危険は承知していた。だが彼にはそうしなければいけないだけの理由があった。
 キャノン砲を失ったドミニオンには遠距離戦闘用の武装がない。そのため中距離以上の距離を開けられるわけにはいかなかった。しかもメタトロンは先ほど強力な遠距離攻撃を使って見せたのだから距離をあけすぎることは即敗北につながっているのだ。そのうえ遠距離といわずに中距離まで離れてしまえば戦艦からの援護射撃があるかもしれない。援護射撃そのものは怖くないがその隙に距離を開けられてしまうのが辛い。そうなっては勝ち目がない。それ故にドミニオンは危険な近距離での撃ち合いをせざるを得ないのだ。

「だったら」

 距離をとらせてもらえずにこのままでは互いに被害が大きくなっていくだけだと判断したアキラはメタトロンを一気に突っ込ませる。ドミニオンのガトリングガンを最小限の動きでかわすがかなりの数が装甲を掠めていく。だがその程度の被害は無視して距離を詰める。さすがにエネルギーソードの距離になるとガトリングガンはこない。
 エネルギーソードがぶつかり合う。この時にはすでにどちらもガトリングガンを収納している。
 メタトロンは今度は頭部マシンガンをくらわないようにドミニオンよりも低い位置から攻撃する。そのメタトロンに向けてドミニオンは何度も斬りつけてくる。だがメタトロンはそれを受け止めながら空いている左手をゆっくりと動かしていき、フルメタリックナイフを抜く。
 何度目かの攻撃でエネルギーソード同士がぶつかり合う瞬間、メタトロンは突然エネルギーソードを手放した。
 ドミニオンの振るったエネルギーソードは捨てられたエネルギーソードを攻撃し、メタトロンはその隙にメタトロンはドミニオンの懐にもぐりこんだ。
 驚いたドミニオンのパイロットが距離をとろうとするがその時にはもうすでに手遅れだった。
 メタトロンはフルメタリックナイフをドミニオンの右腕の間接に突き刺した。動きを妨げないために装甲の薄くなっている間接部分にフルメタリックナイフの刃が食い込み、動きを止めた。
 ドミニオンはガトリングガンの銃口をメタトロンに向けるがその腕を右手でつかみ、射線を自分からはずす。
 頭部マシンガンを撃たれてセンサーのいくつかがやられるが気にしない。アキラはすでに戦況の流れがこちら側に傾いてきていることに気がついていた。
 メタトロンのレーダーであるマルクトは常にこの戦場全てを把握していた。そのマルクトのレーダーから最重要でマークしていた空母の反応が消えたのが突撃する少し前、新たに現れた三つの戦艦から出てきたドミニオンも今戦っている一機を残してすでに倒されている。そして仲間の三機はどれも反応を残している。ここまでくればこちらの優勢は覆らない。

「セフィラーシステムケテル始動」

  背中にまわされていたパーツが左肩の上へとせり上がり、バレル部分が旋回して前方へとのびる。そして前方に伸ばされた左腕と接合する。
 六枚の翼が展開し、天使はその本来の姿を取り戻す。

「モードショットガン」

 中のシステムがモードスナイプとは違う形になる。
 ドミニオンのパイロットはモニターいっぱいに映るケテルの銃口の奥に光が強くなっていくのを見た。頭部マシンガンを撃っても効果はない。

「エネルギーチャージ完了」

 この戦闘の始まりからチャージをしていたのでエネルギーチャージは終わっている。

「目標設定」

 メタトロンはその銃口を下げる。相手の両腕をこちらの両腕が掴んでいるのでたいした移動はできない。ケテルの銃口がドミニオンの装甲すれすれのところを降りていき、胸部で止まる。

「ケテルブラスター、ファイヤー!」

 幾筋もの光の本流が銃口より飛び立ち、ドミニオンの装甲に突き刺さる。至近距離から発射された高圧縮レーザーの束は装甲をたやすく破り、内部機構をずたずたに壊していく。
 それはジェネレーターを砕き、爆発を呼び起こした。

「うわぁ!?」

 至近距離からの爆発にさらされてメタトロンの装甲も削られ、コクピットも激しく揺れた。

「…まさかここまで大きな爆発がするとは思わなかった」

 ようやく爆発が収まった後、アキラは至近距離でケテルを使ったことを後悔した。
 士官学校でもBFや戦艦の爆発に巻き込まれないようにと教わってはいたが、シミュレーターでの経験からメタトロンなら大丈夫だと判断していたのだが、残念なことにメタトロンの爆発の大きさがどの程度なのか知らなかったために予想以上のダメージを負ってしまった。

 ケテルブラスターのモードショットガン、またの名を広域拡散モード。高エネルギー圧縮システムの最後の部分を変えて幾筋ものレーザーを同時に発射することができる。その分威力は落ちるわけだがそれでもそこらの量産機くらいならば余裕で破壊でいるだけの威力が一発一発に込められている。ショットガンの名の通り距離があれば同時に何機ものBFを倒せるし、至近距離で撃てばエネルギーが集りその分威力が増す。その際の威力はモードスナイプのように一点集中による貫通性はないが単純な破壊力では同じぐらいである。

「さて、あれもどうにかしておかないとな」

 わずかに残ったモニターには逃げようと方向転換をする敵のガルガリンA−Uの姿が映っている。それにユイのガルガリンA−U改が攻撃を仕掛けているので上手く方向転換ができないでいる。
 メタトロンは今まで使っていなかった遠距離武器であるロングエネルギーライフルを取り出し、少しずつ動きながらゆっくりと狙いをつける。
 センサーがぼろぼろだがマルクトは生きているので狙いをつけるのは難しくない。
 こちらの動きに気がついていない敵戦艦に向けてロングエネルギーライフルがエネルギー弾を吐き出した。
 一発、二発、三発、四発と続き、戦艦に突き刺さった。そしてそこにさらにガルガリンA−U改からの砲撃が続き、敵戦艦は爆発を起こした。

「ふう」
『アキラさん、大丈夫でしたか?』

 一息ついたところでユイが通信を入れてきた。

「あんまり大丈夫じゃないかな。さすがにドミニオン相手に接近戦はきついよ」
『そうですか、でもありがとうございます。おかげで助かりました』
「ほんと、無事でよかったよ。これが僕じゃなくてレイイチだったらもっと上手くやるんだろうけどさ」
『あら、私を守ってくれるのはいつでもレイイチさんではなくアキラさんですよ』
「そ、そう」

 ユイの言葉にアキラは頬をわずかに赤く染めながら応えた。

『はい、それでは修理の準備をしておきますから着艦してください』
「了解」

 アキラはセフィラーシステムを解除してユイの待つガルガリンA−U改に戻っていった。


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