「ケテルブラスタ-、ファイヤー」
モードショットガン状態のケテルから無数の光線が放たれる。威力はあるが単発式のエネルギースナイパーライフルでは避けられてしまい広範囲に大量にばら撒けるガトリングガンでは威力が足りず丸みを帯びた鱗状の装甲によって弾かれてしまう。
だがケテルならば例えモードショットガンでも威力は十分、そして数もある。メタトロンの武装の中では最も効果的な武器といえる。
だがそれさえも敵の蛇型BFは避けてみせる。これでもまだ撃墜するには足りないのだ。そう、撃墜するには。
そんなことはアキラも承知の上だ。ケテルを使ったからといって倒せるとは思ってはいない。ケテルを使った本当の理由は蛇型BFの動きを動きを制限することにあったのだ。
「はあ!」
エリスが攻撃する隙を作るために。
蛇型BFの上方、普通のBFならば背後にあたる方向から近づいていたミカエルがその背に向けてエネルギーソードを構えて飛ぶ。
動きを制限された中でも蛇型BFは尻尾のエネルギーソードを使ってミカエルに攻撃を仕掛けてきた。
だがエリスは落着いてエネルギーソードでそれを受け止める。そして空いていた左手で腰からハンドボムを取り出しすぐそこにある装甲に向けて放り投げる。すぐさま逆噴射をかけて蛇型BFとの距離を開ける。
ハンドボムが爆発し、その余波を受けてミカエルが後ろに飛ばされる。前もって距離を開けていたために多少あおられただけで装甲にはまったくといって損傷はない。
爆煙が晴れ、姿を現した蛇型BFにエリスとアキラは息を呑んだ。
「化物め」
エリスが思わず呟いてしまったのもしかたがない。煙が晴れ姿を現した蛇型BFはハンドボムがぶつかった場所を少し黒く焦がしていたが、それ以外にはまったく損傷がない。少しでも装甲がはがれてくれればと思っていた二人にとってこれは好ましくない状況だ。
「あの装甲の丸みは衝撃を逃がすためのようだな」
「うん、ガトリングガンも弾のベクトルをあの装甲にずらされているから弾かれているんだね」
「ああ、だがまさか爆発の衝撃まで受け流すとはな。やはりエネルギー系の武器か直接叩きつける接近戦用装備でしか有効なダメージは与えられないと思ったほうがよさそうだ」
「そうなると僕のケテル・モードショットガンか接近戦だね。でもエネルギーをチャージするのにまだ時間がかかるよ」
たった今ケテルは使ってしまったばかりなのだ。その膨大なエネルギー量故に連発することができないのがケテルにとって最大の弱点といえる。
「しかたがない、やはりどうにかしてロルフとミリアが来るのを待つしかないか。アキラ、後どれくらいで来る?」
「後一分ぐらい、間に敵機はいないからすぐに来れると思う。ちなみにケテルのチャージが終わるまで二分ぐらい」
「後一分ぐらいならば接近戦で持たしてみせる。アキラは援護しながらチャージをしてくれ。私が行く」
「わかった、気をつけてね」
「ふっ、私はレイイチ以外の奴に負けるつもりはない」
「そうだね、がんばってね」
「ああ」
再びミカエルがバーニアを吹かして蛇型BFに接近する。アキラはセフィラーシステムを解除してエネルギースナイパーライフルを構え、照準を合わせる。
「絶対に、勝ってみせる」
レイイチのおかげでやってくる敵が少なくなったのを見計らってロイドはイェソドの端末ユニットを射出して周囲の状況を探っていた。
この端末ユニットはコクマのように戦闘能力こそないが情報収集用の端末としては優れており、これこそがイェソドの命とも言うべき存在であった。
現在展開している端末ユニットの数は八つ、ガブリエルに積まれている端末ユニット全てだ。
だがそれにもかかわらず敵母艦の情報になりそうなものは何も捉えられなかった。
わずかな電波障害も感知することはできず、いかなる波長の光を当てても何らかの姿が見えることはない。これは索敵を始めてからすでに七回目の同じ結果だ。全て場所を変えてやっているにも関わらずただの一度も反応がないのにはロイドも呆れるしかない。
なぜならこれですでにこの周辺の索敵は終わってしまったのだから。となると母艦など最初からいなかったか、それとも今まで調べたよりもさらに遠くに待機しているか、あるいは考えたくないことではあるがイェソドのセンサーにさえ気がつかせないほど技術を持って隠れているのかだ。
一番最初の答えを出すにはまだやらなければならないことがある。二つ目ならばこのまま索敵範囲を広げていく必要がある。そしてもし最後のならばどうしようもないということになる。それこそレイイチやエリスのまともではない人間の勘にでも頼るか、それともライナスとコクマの経験と計算から導かれた可能性にかけるか、どちらにしても不確定すぎる方法だ。
まずはもう一度指示を仰ぎなおすべきだと判断したロイドは端末ユニットに帰還命令を出そうとしてはっと気がついた。
あの敵BFはどのようにして動かされているのか?
有人機ではないことはたしかだ。ならば無人機であることは間違いない。だがそれにしてはおかしなところがあった。
戦術的集団行動をとったこともそうだが、他の場所で戦っていた機体がいきなり離れたところにいるレイイチのカマエルに向けて移動することが何度かあった。普通手近なところから攻撃を仕掛けていくはずだ。わざわざ理由もなく遠くの敵に向かう必要はない。そして無人機ならばその理由がある可能性は少ない。ならばその理由は二つしかない。
一つはプログラム上での優先順位に選択されていたことにレイイチが引っかかったということ、だがこれは防衛戦でならばともかく襲撃側としてはそのような命令を加える必要はない。もしあるとすればその近くに母艦があるということだが、その可能性は低い。そう断言できるほどにカマエルの周囲の状況はひどいのだ。
そしてもう一つ、それは何者かが随時BFに命令を与えているということだ。自分が今端末ユニットに帰還命令を出そうとしたように。
前者の可能性は低い、ならば後者の可能性が高くなる。しょせんは消去法、正しいという保証はないが可能性があるならば試す価値はある。
ロイドはすぐに端末ユニットに命令を下した。すぐに敵のBFから発せられている電波の行方に関する情報がたまっていく。
BF同士の情報の共有がほとんどであったが、その中で明らかに違う方向に向けて放たれている電波が存在した。
ロイドは急いでデータを集めれるだけ集め、その電波が送られる先、おそらく敵母艦があるだろう場所を探り始めた。
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