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 エリスは蛇型BFの頭部方面から攻撃を仕掛ける。いくら自由がきくとはいえBFである以上間接があり、そしてボディに中には複雑な機構のシステムが積み込めれていることは必然である。だからこそ攻撃範囲を広めるためにこの蛇型BFは通常のBFよりもはるかに長く、そして細いボディで造られているのだ。一度曲がる間接が十あれば合計で十度曲がる。十度曲がる関節が三十六あれば三百六十度、つまり一回転する。だがそれは同時に弱点をも作り出す。
 より大きく曲げるにはそれ相応の距離が必要になる。ならば尾の先から最も遠く、そしてもっとも距離がいる場所から攻めれば尾の先にあるエネルギーソードの脅威は薄れる。
 向こうもそれを自覚しているのか無理に尾を動かそうとはせず頭部から生えた角のような二本の銃口からエネルギー弾が放たれた。
 エリスはそれをぎりぎりのところで回避してさらに距離を詰める。本来ならもっと余裕を持って避けたいところであるがそうすればどうしても遠回りすることになる。余計なロスは相手に尾を使いやすいように体勢を変える時間を与えることになってしまう。もしそうなれば自分は不利になってしまうということをエリスはよく理解していた。
 エリスの考えていることはただ一つ、最速で接近して最良の一撃を与え最速で離脱する一撃離脱。それが今の自分にとれる最良の手段であることを自覚していた。
 それに対して蛇型BFも尾を動かしながら両手から伸びる十本のエネルギークローを構えて迎え撃つ。
 一度目の交差、エネルギーソードとエネルギークローがぶつかり合う。その反動を受け流してもう一方のエネルギークローが来る前にすぐさま離れ、加速する。追撃にエネルギー弾が放たれるが機体をひねって回避し、牽制にエネルギーガンを撃つ。そしてその間にアキラが尾を攻撃してその動きを制限させてエリスの安全を確保する。
 二度目、三度目と同じように交差を繰り返していく。だが二対一で相手の動きを抑えてなおまだ二人のほうが不利だった。
 二度目の交差の時はエネルギークローの反応が早くミカエルの肩をかすめ、三度目の交差の時は左右に時間差をおいて放たれたエネルギー弾がアキラの方へと流れてきてメタトロンの装甲をかすめた。どちらも影響はないがそれでもまだ向こうに余裕がある。エリスはエネルギーソード同士がぶつかり合ったときの反動を上手く流さなければもう一方のエネルギークローへの対応が間に合わないし、アキラが尾への牽制をしくじれば離脱しようとしているミカエルに尾の攻撃が届くかもしれない。どちらがミスをしてもこの均衡はあっさりと崩れかねない。

 そして六度目の交差の時、変化が起きた。
 蛇型BFは今までと同じように正面から接近しようとするミカエルに向けて二つの銃口のうち片方からだけエネルギー弾を放った。そしてミカエルがそれを避けた先にもう一方からエネルギー弾を放つ。
 エリスは突然のことに反応が遅れ、二発目のほうが装甲を掠めてしまった。さらに蛇型BFは二つの銃口から交互にエネルギー弾を放つ。
 ミカエルはその一つ一つを順に避けていくが、どうしても回避のたびに勢いが消えていき、十分な速度が保てない。無理して前に出ようとすれば直撃こそしないが避けにくくなり、たどり着く前に直撃をくらう可能性が高かった。
 さらに蛇型BFが自ら距離を詰めてくる。
 エリスはどうにかして距離をとろうとするが今度はそれすらも許してくれない。
 アキラも援護しているが蛇型BFの進行を止めることはできない。
 エリスは意を決し、前へと出る。この距離ではもう一撃離脱ができるほどの速度は出せないが、このままでいても危険になるだけなのだ。
 敵頭部へエネルギーソードを振り下ろし、左のエネルギークローで受け止められ、反動を逃がして外側へとまわろうとするがエネルギークローの一本が逃げ道をふさぐ。そしてさらに右のエネルギークローが襲い掛かってくる。とっさに左でハンドボムを抜き、エネルギークローに向けて投げつける。エネルギークローに触れたハンドボムは爆発に、その爆風はミカエルと蛇型BFの左腕を襲う。その爆風の煽りを利用して距離をとった。だが満足に距離をとる前にエネルギー弾が放たれた。

「くっ!」

 爆風にあおられて満足に回避できないミカエルは爆風の直撃を受けて破損した左腕を盾にしてそれを防いだ。
 左腕の爆発によってさらに距離を取れたがそこに畳み掛けるようにエネルギー弾が放たれた。
 かろうじて射線からミカエルをどかせたが、いつまで避けられるかわからない。エリスは最悪の場合の覚悟を決めた。
 そして終わりがやってきた。ただし、エリスの予想とは違う形で。

 放たれるエネルギー弾の嵐の中に二つの影が飛び込んだ。一つは真紅で一つは蒼、その二つはためらうことなくミカエルと蛇型BFの間に入った。
 真紅の影が掲げた左腕のエネルギーシールドがミカエルを襲うエネルギー弾の全てを弾く。蒼い影がミカエルが体勢を立て直すのを手助けする。
 新たな乱入者に蛇型BFも攻撃をやめて距離を置いた。

「ミリア、ロルフ、すまない助かった」
「いいっていいって」
「エリス様無事ならば何よりです」

 礼を言うエリスに二人は笑って応え、すぐに表情を引き締めて蛇型BFを見つめた。

「なんというか、変わったBFよね。あたしは知識がないからなんとも言えないけどああいうのも造れるのね」
「形状に問題はない。だがたとえBFであっても作業ができることが前提となってできている。だからこその人型なのだ。おそらくあれは純粋に戦闘力のみを追求した結果なのだろう」
「なるほど、ただ物を壊すのに器用な動作なんか必要ないものね。ただ純粋に破壊力があればいい」
「そういうことだろう」

 BFが人型である理由は結局のところフィギュアが作業用であるためだ。単純な飛行性能ならば戦闘機のほうが高いし、砲撃能力ならば機動砲台のほうが上だ。ただ戦闘能力を求めるならば人型はけして有利な物とは言えない。BFはあくまで戦闘能力を高めた作業用フィギュアにすぎないのだ。

「ミリア、ロルフ、相手のデータを送るから簡単にでいいから目を通して。そうしたら僕が援護するから向こうの動きを止めて」
「わかったわ……ふーん、厄介な戦い方をするのね。まかせて、何とか止めて見せるわ」
「まかせてくれ」

 アキラから受け取ったデータで蛇型BFの戦闘方法を理解した二人はBFを加速させ、両側から挟みこみに入った。
 蛇型BFは両手のエネルギークローを使って迎撃にでる。エネルギーソードとエネルギークローがぶつかり合う。だが今までミカエルがやっていたように反発力で弾かれることなく。鍔迫り合いを繰り広げる。
 ハミエルとラファエルにあってミカエルにないもの、それは近接戦用特有の推進力だ。二人はその推進力で反発力を押さえ込んでいるのだ。
 さらに動きが止まったところでミカエルが飛び込み、エネルギーソードを振り下ろす。蛇型BFはエネルギーガンで牽制し、その隙に鍔迫り合いを繰り広げていたエネルギークローを消して後ろへ退いた。
 今まであった手ごたえが突然消滅したことで前のめりに体勢を崩し、さらにバーニアを吹かしていたので前へと出てしまう。それがちょうど左右から来ていたBF同士がぶつかり合うコースになった。

「くっ!」
「なにくそ!」

 だが二人とも無理矢理機体の向きを変え、衝突を回避した。
 しかし二人の衝突予想地点はミカエルと蛇型BFを結ぶ点にあったためエリスもまた前へと出ることを止められてしまっていた。

「二人とも大丈夫か?」
「はい」
「ええ」
「そうか、ミカエルの残りエネルギーも少ない。次で決めにいこう。皆もそれでいいか?」
「いいよ」
「わかったわ」
「かしこまりました」

 三人が応えそれぞれ武器を構え蛇型BFに意識を集中させた。


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