html> ブレイブフィギュア


 月周辺の宙域にステルスを用いて警戒網を抜けていく一隻の戦艦があった。

「さて、月にいるベヒモスから連絡があったよ。アキラ・ベルガーは重傷、上手くいったみたいだね」

 戦艦の艦長席に座るベルゼは各々適当に腰掛けている仲間に言う。今ここにいるのは先日レイイチにやられたアスモとベルフェの二人、そしてベルゼの三人だけだ。

「これから僕らは月に攻撃を仕掛ける。まああまり被害を出しすぎてもいけないから近づくだけで十分だろうね。軍の防衛部隊には前もってベヒモスと一緒に降りたリヴァが工作しているからあまり気にしないでいい。僕らの目的はレイの戦艦に乗っていたBFだ。アスモとベルフェと僕の三人で彼らの相手をする。特に第二世代は要注意だ。今回の攻撃はあくまで威力偵察、我を忘れてやり過ぎないようにしてくれよ、特にアスモ」
「わかってるよ、だけど本当にそれでいいのかよ。いっそのことここで片付けちまおうぜ」
「同感だ」

 慎重なベルゼの作戦に一応納得はしているものの倒せるならば倒せるべきにやっておくべきだと考える二人はさすがに異論を唱えずに入られなかった。
 たしかに第二世代は厄介だが絶対に勝てないというレベルではない。そしてそれ以外の連中ならたとえ二対一でも負けない自信があった。現に先のリヴァの戦いも二対一でも苦戦はしても負けてはいなかったのだから。

「使えるものは使うべきだからね。どうせならば彼らにはテスト相手になってもらおうかと思っている。特にベヒモスのテストには最適だと言える」
「テストね、ベヒモスはともかく他のテストに使えるとも思えねえがな」

 多少の不満こそあれ結局アスモはベルゼの案に逆らう気はなかった。そしてそれはベルフェも同じであった。

「さて、始めようか」





「防衛隊警戒ラインの内側に未登録戦艦の反応あり!」
「なんだと? 防衛隊は何をしている」

 第九研究所で監視衛から送られてくるデータを見ていたグレッグはその報告を聞いてすぐに現在エデンズガーディアンのBFがある基地内の格納庫へ内線を入れた。

「こちら管制室、謎の戦艦が接近している。いざというときに備えてBFを緊急射出用のカタパルトに移しておくように、もちろんパイロットも一緒にです」
「未登録戦艦の照合終わりました。データベース上にありました。あの戦艦はバンデモニウム・ユニットです」
「なんだバンデモニウムユニットとは? 聞いたことがないぞ」
「は、はい、私も初めて見ましたがたしかにそう登録されています。また、どうやらこの戦艦は先日ノアの輸送任務中に襲ってきた戦艦のようです」
「なるほど、例の奴か!?」

 それを聞いたグレッグはすぐに懐から通信機を取り出し部下に連絡を取る。ついさっきアキラが重傷を負ったという報告を受けたばかりの相手に再びすぐに通信をしなければならないことに歯がゆさを感じながらもグレッグは職務に忠実にやるべきことをなす。

「レイイチ様に伝えろ、所属不明艦が接近中、敵対の意志がある可能性が高いと」
『了解しました』

 通信を終了したグレッグは一度だけため息を吐き、すぐに防衛隊への連絡を取り付けさせる。もしあの戦艦がつきに攻撃を始めるようなことになればどれだけの被害が出るのか予測もつかない。そうさせないためにも月面に敵の攻撃が届く距離にたどり着く前に迎撃しなければならない。ここから先は時間も敵に含まれるのだった。





 グレッグからの伝言を聞いたレイイチとエリスはアキラのことをユイにまかせてすぐに外へと飛び出し車にのって研究所に向かいだした。

「やはり奴らか?」
「ああ、まちがいない。このタイミングで来るのなら奴らのはずだ。エリス、先に言っておく。止めるなよ」
「当然だ。今回は私も怒っているのだ、悪いがストッパー役としては期待するな。今回は私も思いっきり暴れさせてもらう」
「上等、後悔させるぞ」
「当然だ」

 レイイチは制限速度を大幅に超えて車を走らせているのだが、乗っている二人は怒りで精神が昂揚している以外はいたっていつも通りだ。車は車線を無視して走っているし、対向車がいても反射神経と動体視力に物を言わせて避けていく。普段なら多少急いでいてもしないことだが今のレイイチたちはかなり気が急いていた。裡に溜りし溶岩のごとき感情の奔流が出口を求めて駆け抜けているのだ。一刻も早くそれを解き放つ為にレイイチは車を走らせていく。





「ったく、なんでレイイチたちがいないときにこんなことになるんだよ」
「無茶言わないでよ、来ちゃったものは来ちゃったんだから」

 カタパルトより射出されたハミエル、ラグエル、ラファエル、ガブリエル、ザドキエルの五機のBFは未登録艦の予測進路上に展開していた。すでに管制室から未登録艦に向けて通信を行ったようだが応答はなく、敵艦として捕縛、それが不可能のようならば破壊するように指示を受けていた。だが敵が例の奴らだと知ったとたん不安になったのだ。なんせ前回はアキラとエリスの二人がかりでも倒せず、援軍としてやってきたミリアがやられるという結果になったのだ。

「すぐにエリスさんとレイイチさんも来るそうですから大丈夫ですよ」
「エリス様がいらっしゃれば大丈夫だ」
「はい」
「まあレイイチがいればね」

 ライナスとミリアはレイイチに、ロイドとロルフとアリスはミリアに絶対とも言える信頼を寄せているのでその二人さえいれば何とかなるだろうと考えている。しかし二人が来るまでにはまだ時間がかかり、それまでは自分たちだけでどうにかしなければならないのだ。
 そして、ついに敵がやってきた。

 姿を現したのは戦艦ではなく三機のBF、三機とも共通して通常よりも大きな、ドミニオン以上のサイズを持っていた。前回いた蛇型BFは姿が見えず、今回現れたのは一応全て人型になっていた。ただし、一機だけは人型と言っていいのか判断がつきかねた。
 ミリアたちから見て左側にあるBFはグレーのカラーリングのアークエンジェル系列のようなスマートなつくりになっているが背中に積んであるバックパックが大きく、両肩とボディの真ん中にそれぞれ半球状の物がついている。対して右側にある藍色のカラーリングのBFは三機の中で一番変わった形状をしており、腕が二本ではなく六本になっている。そして真ん中の漆黒のカラーリングのBFは大きな翼を持っていた。

『初めましてマドモアゼル、それともフロイラインのほうがよろしいかな?』

 驚いたことに近づいてきたBFはロイドたちに通信を行ってきた。

「あいにくですが私は男性なのでそのどちらにも当てはまりませんね」
『それは失礼。あなた方のリーダーは女性の方だと思っていたのでね』
「残念ながら正式なリーダーは男性ですね」
『ほう、ではエリス・ベルガーがリーダーではないということですか』
「そういうことです」

 ロイドは普通に会話しているようだがそれを聞いている者たちは皆いつでも戦えるように身構えている。それは敵も同じで通信を行ってきている真ん中のBF以外はすぐにでも襲い掛かってきそうだ。

「ところであなた方はどなたですか? 呼び名がないと困るのですが。先に言っておきますと私はロイド・チャーチルです」
『これは丁寧に、僕はベルゼブブ、気軽にベルゼと呼んで下さい。そしてグレーのがベルフェゴール、藍色のがアスモデウス、それぞれベルフェとアスモで結構です。あとそちらの紹介はいりません、全て調査済みですから』
「それはわざわざご苦労様です。ところで今回は一体何の用でしょうか?」
『いえいえ、僕たちの目的はあなたたちではないのですがね、まあついでといいますか余興といいますか、まあ本来の目的であるあなたたちのお仲間がやってくるまでの間ダンスにでも付き合ってもらいましょうか』

 ベルゼの翼が大きく広がる。

「なるほど、ダンスパーティーですか」

 そしてロイドもまたエネルギーガンに手をかける。

『では始めましょうか』

 その瞬間戦いが始まった。


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