宇宙空間を二条の光線が奔る。だがその光線はベルフェゴールの前に現れた光壁に遮られてむなしく散った。
「あらら」
「無駄だ」
光壁が消えてベルフェゴールより一条の光線が伸びザドキエルの装甲をかすめた。
アリスがザドキエルのエネルギーランチャーを撃つがやはり先ほどと同じように光壁によって遮られてまった。
「困りましたね、ぜんぜん効きません」
「だからと言って何もしないわけにはいかない」
ザドキエルの横にラファエルが並び、ベルフェゴールに向けてエネルギーソードを構える。
ベルフェゴールは背中のバックパックから伸びるエネルギーランチャーを構え、両肩と腹部にあるドームをわずかに輝かせながら二人の動きを眺めている。完全に待ちの体勢だ。
下手な攻撃は隙を作る結果にしかなりそうもない。だが動かないわけにもいかないのも事実。
「俺が後ろに回り込む、気を引いてくれ」
「了解しましたわ」
ラファエルがベルフェゴールを中心に弧を描くように移動し、ザドキエルがエネルギーランチャーを放つ。ベルフェゴールに攻撃させないためにエネルギーを抑え、左右のエネルギーランチャーから交互にエネルギー弾を撃ちベルフェゴールを釘付けにする。
ベルフェゴールは最初から避ける気がないのか光壁を張り巡らしたまま動こうともしない。
そしてその間にラファエルは背後に回り、後ろから一気に接近する。
「セフィラーシステムホド始動」
背中からは六枚の蒼い翼が広がり右腕のパーツから杭のような物が伸びる。
「打ち砕け!」
ラファエルはその右腕から伸びた杭をベルフェゴールのほうへと向けた。
だがしかしそれさえも光壁に遮られてベルフェゴールには届かなかった。
「なに!?」
ベルフェゴールが展開している光壁は三つのドームよって形成されているという判断をしたが為にロルフは後ろには光壁がないと思い後ろから攻撃を仕掛けたのだが、ベルフェゴールの光壁は球体状に形成されていた。そのため後ろからだろうとどこからだろうと全ての攻撃を阻んでいた。
ベルフェゴールが銃身を動かして弾かれて動きの止まったラファエルに照準をセットした。そして光壁が消えてエネルギー弾が放たれる。
「くっ」
「今!」
光壁が消えたと同時に一条の光がベルフェゴールの右足を吹き飛ばした。ベルフェゴールの意識がラファエルに向き、光壁が解除された一瞬をついて放ったザドキエルのエネルギー弾が当たったのだ。
「なんだと?」
ベルフェは右足をやられたことに驚いていた。ベルフェにとって今相手にしているのは格下で真面目に相手をする必要すら感じていなかった。自分達にとって敵と呼べるのは第二世代の乗るカマエル、幾度となく邪魔をしてきたミカエル、そしてこちらに引けを取らない破壊力を持つメタトロンの三機だけのはずだった。他はしょせんおまけに過ぎず、連中に自分達を倒すことなどできるはずもないと思っていたのだ。
だが実際にはこうして手傷を負わされている。けして許せることではなかった。
「……スロウス」
再びベルフェゴールを光壁が包む。だが今回はその色が違っていた。先ほどまではエネルギー光を示す白い光だったのが今度は黒、まるで光を完全に遮断しているかのような色をしていた。
「今度は何だ?」
「わからないですけれども向こうが攻撃するにはバリアを解除しなければいけないはずです。その隙を狙いましょう」
「わかった」
二機は離れてどちらかを攻撃された隙にもう一方が攻撃できるように備えた。だが現実は二人の予想を超えたものだった。
黒壁の向こうからエネルギー弾が飛び出してきた。
「うぉ!」
「えっ?」
壁の向こうから飛び出してきたエネルギー弾に二人はかわしながらも驚きの声を上げた。
「まさか」
ラファエルがエネルギーガンを構えて撃つ。エネルギー弾は黒壁の表面にぶつかり光り、弾かれた。
「外側の攻撃は通さず内側からの攻撃は素通りするようですね」
「…反則だろ」
さっきまでは攻撃の際に黒壁を解除しなければならなかった為に攻撃を当てることができたのだ。だが黒壁を解除しないでいいのならばこちらの攻撃は届かない。ただ一方的に撃たれるだけだ。
二人は最悪の状況に息を呑んだ。
「あなたもなかなかやりますね」
「いえいえ、そちらもかなりの腕前で」
翼を広げたベルゼブブとイェソドの端末ユニットを射出したガブリエルが距離を置いて向かい合っていた。戦況はガブリエルが不利なようでガブリエルは装甲のいくつかが破損しているようであるがベルゼブブは無傷だった。
ガブリエルが攻撃用ではない端末ユニットを出しているのには訳がある。こうしなければとてもではないが戦えなかったのだ。
ベルゼブブが翼を全身を包むように閉じていく。するとベルゼブブの姿が消えていく。光学センサーさえも騙す完全なステルス機能だ。
ロイドは端末ユニットから送られてくる情報に目を光らせる。たしかにこのステルスはセンサーでは捕らえられない。だが無力というわけではない。
センサーに反応があった。ガブリエルの下だ。すぐにガブリエルが横に移動しながらその方向を向く。すると向いた方向に現れていたベルゼブブがエネルギーガンを撃つ。それをかろうじて避けて反撃をする。さきほどからこうしてベルゼブブが姿を現す瞬間の反応を見て対処していた。だがこれは明らかにロイドにとって不利な戦いだった。
向こうが自分で好きな時を選べるのに対してこちらは常に向こうにイニシアチブを握られているのだ。しかも機体の性能も向こうが上、パイロットの技能としてもロイドの方が上ということはないだろう。
だがそれでもロイドは焦ってはいなかった。そもそもロイドのガブリエルは本領は戦闘ではなく調査、情報戦で他のBFの補佐が主な役割だ。単純な戦闘能力ならば八機中一番下だろう。だからそもそも勝てるとは思っていない。勝つ必要があるとも思っていなかった。なぜならば本当に強い者が二人ほど後ろに控えているのだ。その二人が到着するまで時間を稼げればそれでいいのだ。
そして時は満ちる。
その背に光の尾を描きながら純白の天使が戦場に舞い降りた。
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