「セフィラーシステムケブラー、第一次リミッター解除」

 六機の味方機と三機の敵機をモニターにとらえたレイイチはリミッターを解除すると同時に状況を把握する。

「セフィラーシステムケブラー、第二次リミッター解除、ジェネレーターフルドライブ」

 ミカエルとガブリエルは負傷しているがそれは相手も同じ。ハミエルとラグエルも互角の戦いをしているようだ。一番危険なのはラファエルとザドキエルのコンビだ。黒い球体のような物から放たれる光線にさらされた二機は逃げ回るしかできず、次第に追い詰められているようであった。
 レイイチはよく見ると黒い球体の内側にBFが薄く見えているのに気がつきそれが敵のバリアなのだと気がついた。そしておそらくそれはあの二機では貫けない強度があるのだろう。
 それを見てレイイチはまずはあの球体を破壊することに決めた。

 ケブラーの第一次リミッターは武装の制限解除、そして第二次リミッターは出力の制限を解除するものだ。
 カマエルもケブラーも欠陥があるといえどもアイザックが最高傑作と言うだけの物なのだ。だがもとより威力よりもいかなる状況でも戦える汎用性に力を入れた武器であるためケテルやネツアク、ティファレトのような高出力に耐えられるようなものではなかったのだ。そのため七つの武器に変化するという精密かつ複雑すぎる構造を持つケブラーは普段は安全を保証できるだけの出力だけしか出していない。その制限をしているのが第二次リミッター、すなわちこれを解除したことでカマエルは最大の力を発揮することになる。
 だがそれでもまだあのバリアを破壊するためには足りないし、後から来るであろうBFを戦うまでになるべく敵の戦力は奪っておきたかった。

 故にレイイチは切り札を切る。

「サタン、胎動」

 レイイチの意志に従ってナノマシンが活動を活発化させる。そしてジェネレーターとカマエルに積まれているブルームーンが悲鳴を上げ始めた。
 これはカマエルに搭載された機能ではなくレイイチの持つ能力、ナノマシンを通じてブルームーンの力を解き放つことのできる能力だ。

 黒い球体――ベルフェゴールは接近してくるBFに気がつき、そちらに向けての砲撃に変更した。それによってロルフとアリスも接近してくるカマエルに気がついた。だが同時に違和感を感じてもいた。なぜならばカマエルの全身を覆うように青白い光が生まれていたからだ。

「ライト・ランス始動」

 エネルギー弾をかわしながら接近するカマエルのライト・ケブラーに青白い光が集り円錐状になる。それはネツアクよりも細い、そしてネツアク以上のエネルギーを凝縮させたエネルギーランスだ。
 カマエルは接近の勢いのままにエネルギーランスを球体に突き刺した。それはバリアをたやすく貫通し、正確にベルフェゴールを貫いた。

 それは偶然にもベルフェゴールのコクピットを貫いていた。ベルフェは青白い光が絶対の自信のあったバリアをたやすく貫いたのを見た瞬間に消滅していた。その一部始終を見て冷や汗を浮かべていたのはベルゼだった。

「ま、まさかこれほどまでだというのか……」

 ベルゼもレイイチは強いと認識していた。だがそれでも一対一でならば負けないとも思っていた。だがその予想がいかに甘かったのかを今の一撃だけで思い知った。
 彼らの中でベルフェゴールの防壁スロウスを破壊することができるとすればメタトロンのケテルモードスナイプぐらいであろうとあろうと思っていた。それをあろうことかエネルギーランス一本であっさりとやってのけるとは思わなかった。そして何より、あの青白い光は間違いなくレイ・ソードと同じブルームーンの内なる力を解き放っている証だった。ベルゼたちがその力をコントロールするためのユニットを彼らが造れるとは思えなかった。だがそれでもレイイチはそれを使って見せた。それはすなわちレイイチがブルームーンの力を制御することができるということだ。そんなことができるのはもはやバンデモニウムチルドレンですらない、自分達よりも高いところにいる生物だ。

「この化物が!」

 ベルゼと同じような感想を抱いていたのはアスモも同じだった。
 アスモデウスはハミエルとラグエルの存在を無視してカマエルに襲い掛かった。六本すべての腕からレイ・ソードを伸ばして切りつける。

「レフト・ソード」

 だが相手が悪かった。レイイチはミリアですらまるで相手にならない格闘能力を持っている。そのレイイチにミリアにすら通用しなかったアスモが勝てるはずもなかった。
 下側にもぐりこみ上から襲い掛かってくるレイ・ソードをエネルギーランスが受け止める。そのまま滑り込ませるように上昇し、エネルギーソードで手足を切り落とし、返す刀で肩口から袈裟懸けに斬った。

「す、すごい……」
「嘘だろ……」

 大破したアスモデウスと先ほどまで戦っていたミリアは感嘆の声を漏らし、ライナスは眉を顰めて唸った。あれほどまでにてこずっていた相手をあっさりとしとめたレイイチに驚きを隠せなかった。ライナスにとっていくら強いといってもあの強さは異常としか思えなかった。
 だが彼らの中で最も驚いていたのはエリスだった。エリスはつい先日レイイチの秘密を教えられた。それと同時にBF戦になった場合は自分の方が不利だとももらしていた。だが目の前の光景はそれを裏切るものであった。レイイチの強さはあまりに圧倒的過ぎた。

 カマエルはアスモデウスが大破したのを確認すると残ったベルゼブブの方を見た。だれもが次にベルゼブブに向かうと思っていたがカマエルがとった行動は違っていた。この宙域からわずかに移動し始めていた。
 おかしいと思いながらもエリスたちは不測の事態に備え、また同時にベルゼブブに相対する為に集った。ベルゼもまたレイイチの行動を不審に思いながらもエリスたちに備えた。

 だが彼らは皆すぐにレイイチの行動理由に気がついた。なぜならばレイイチの向かうすぐ先に新たなBFが待ちうけていたからだ。そしてそれはカマエルと同じ頃に月から昇ってきたBFだった。


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